百七十一頁目
一日ぶりとはいえ作業ができる拠点に新素材を持ってこれたこともあって、結構遅くまでクラフト作業に没頭してしまった。
特に念願の水晶が少量とはいえ手に入ったことで作りたかった原油ポンプ……は例のカプセルから回収できたので辞めておいたが、トイレと熱対策防具の頭部分は完成させることができた。
これでようやくこの砂漠で作れる専用装備とも言える熱対策の防具が揃ったわけだが、今作ったばかりの頭を保護する部分にはゴーグルまでついてきていた。
尤も水中で使えるようなものではないようだが、軽い風で顔に向かって吹き付けてくる砂から目を守る役割は果たしてくれそうだった。
……そういえば前にこの砂漠の天候の変化で凄まじい砂嵐が起こったことがあった。
軽く拠点の中から眺めただけでも砂の勢いが凄まじくて目も開けていられないほどであったが、これさえあれば視界だけは確保できそうだ。
まあそれでもあんな砂嵐の中を出歩くべきだとは思わないが、万が一そんな必要に駆られた時のことを思えばこの頭部を保護する防具だけは人数分揃えておきたいところだ。
またトイレの方も専用の個室にあらかじめ引き込んであった水道を新たに分岐させて配置し、いつでも使える状態に持っていった。
これで便意を無駄に我慢したりせずに安全に用を足すことができる……と思った途端に催してきて早速使ってしまった。
何だかんだでこの砂漠は危険すぎたから拠点内でしかできなかったが、新しくルゥちゃんという女の子が仲間になってからは彼女の目につきそうな場所でするのが躊躇われて我慢しがちだったせいだろう。
果たしてハンスさんも同じような心境だったようで、俺が出るなり入れ替わる様にトイレに籠ってしまうのだった。
……うん、やっぱり作って正解だったなぁ……後はルゥちゃんにも使い方を教え……いきなり脱がれても困るしその役目はオウ・ホウさんにお願いしよう。
百七十二頁目
水晶が手に入ったお陰で望遠鏡に始まり、防具の完成やトイレといった新しい物を作り上げることができて一気に充実してきた感がする。
ただ残念なことに採取できた量が少ないこともあり、ハンスさんが前に言っていた役に立つ道具を作るための分は残らなかった。
まあ当のハンスさんは残念そうにするどころか、トイレを使えることの方に喜んでいるようであった。
だから取りあえず気にしないことにして、ついで黒曜石で作れるものを作ろうとして……基本的に旋盤で物を加工できるようになってから役に立つものだと思い出した。
前の島ではちょうど旋盤が作れるかどうかのタイミングで手に入ったからそのままポリマーづくりとかに利用していたからすぐ使える素材だと思い込んでいたようだ。
それでも少し考えて髪の毛や髭の手入れなど日常的に使えるハサミを作れることを思い出し、早速一つだけ作っておいた。
……しかしそうやってハサミを作ってみると、何だか急に自分の身だしなみが気になってくるから不思議なものだ。
当たり前だがこの砂漠に身一つで放り出されてから今日までの間、何一つ手入れをしていない自分の髪の毛や髭は伸び放題になっている。
水面を鏡代わりにして見返したりもしていなかったせいで果たして自分がどんな様なのかはわからないが、それでもかなり無様なのは間違いないだろう。
そうして気になってくるとすぐにでも手入れしたくなり、早速ハサミを手にした……ところで鏡もない状態ではどうしようもないと気が付いた。
前に島にいたときはフローラが手入れしてくれていたからなぁ……そう思って右手首の鉱石を見るけれど、流石にホログラムの彼女ではどうしようもないらしく困ったように微笑むばかりだった。
こうなると他の人間に頼むしかないわけだがルゥちゃんに頼むのはちょっと不安だし、かといって不器用な面もあるハンスさんに頼むのもおっかない気がする。
……ああせめて鏡が作れれば話は早かったのだけれど前の島でも作ろうとして何も思い浮かばなかったし……なんて思いながら左手首の鉱石を眺めたら何故か鏡の作り方が思いついてしまうのだった。