百七十三頁目
またしてもこの砂漠特有の砂を交えることで鏡という新しい道具を作れることが判明した。
どうやら左手首の鉱石を見て作り方が思いつくものは、ARKの環境事に取れる素材によって左右されるようだ。
言い換えるならばそれぞれのARKごとに作れる物の一覧が変わると言ってもいいかもしれない
実際にハンスさんに尋ねてみるとその辺のシステムには関わってなかったようで詳しくは知らないけれど、確かに様々な物の作り方が一気に思い浮かんだらむしろ混乱しかねないということでその時点で不必要と思われる物の制作方法は思い浮かばないようになっていると聞いた覚えがあるとのことだ。
……そういえば前にフローラが思い浮かんでいた科学作業台の作り方がその時点の俺では思いつけないことがあったけれど、それもその制限の一端だったのだろうか?
そんなことを思いつつ早速思いついたばかりの鏡を作ろうと改めて必要な素材を頭の中で考えてみて……予想以上に貴重な素材が必要になることに気が付いた。
そりゃあまあ鏡面的な光を反射する物質を作るのだから水晶などが必要になるのはわかるが……余りに量が多すぎる。
かつての島にいた頃ならばともかく、流石に生きるのに不可欠とはいいがたい物に素材をつぎ込む余裕は今の俺達にはなさすぎる。
だからせっかく思いついたのだけれど作るのは諦めるしかない……こうなったら仕方ないし、ハンスさんに髪を切って貰おう。
……ただ日が暮れていて、揺れ動く篝火の照明しかない今やってもらうのは恐ろしすぎるから明日の朝にお願いするとしよう。
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色々やっているうちに夜も更けてきたが人間の悲鳴が聞こえてくることはなかった。
他の場所ではほぼ毎夜のように聞こえていたというのに……やはり前に想像した通り、この場所は最初に人が目を覚ます場所から距離がありすぎて聞こえないのだろう。
しかしこれでは人が襲われていても気づけないため助けに向かうことはできない。
またこの場所までサバイバルに慣れていない人間がたどり着けるとも思えないので、万が一生存者が居ても合流することも難しい。
例え人工的に作られた命だとしても無為に失われていくのを放置するのは辛いし、このまま三人で活動していてはこの砂漠を攻略しきるのにどれだけ時間がかかるのかわからない。
新たな仲間を増やすという意味でもこの場所に引きこもっているのは悪手の様に思われて……だからといってこの便利な立地を離れるのもクラフト作業的にどうかとも思ってしまう。
……こうなったらいっそのこと、この場所での活動はハンスさんに任せて俺だけあの最初に作った拠点を中心に活動するのもありかもしれないなぁ。