ARK とある青年の日誌   作:車馬超

509 / 1041
第509話

百八十三頁目

 

 まるで太陽が落ちてきたのかと錯覚しそうなほど、世界の全てが熱で覆いつくされていた。

 幾ら砂漠が熱い場所で有名だからと言って、これは流石に異常としか思えない。

 生命そのものを否定するような熱気……まあ何故か動物たちは平然としているが少なくとも人間には文字通り致命的過ぎる状態だが、これもまた荒廃した地球環境に適応するための試練なのか、それともやはりARKシステムの異常が引き起こしているのだろうか?

 

 そんなことはわかるはずもない……ただわかるのはこの砂漠用として用意されているであろう絹で作った防具ですらこの熱気には敵わないということだけだった。

 尤も前の島で設計図を基に莫大な資材をつぎ込んで作り上げた高品質なギリー装備ならば或いは耐えられたかもしれない……今更ながらにあれが失われたことが惜しくて仕方がない。

 まあ多分今着ている絹の防具も設計図を作った高品質な物ならばもっと熱に対する耐性が高まって、きっとこの天候を攻略できることだろう。

 

 逆に言えば高品質な防具が手に入らない段階では、本来ならばこの異常な天候の中を出歩くべきではないのだろう。

 実際にハンスさんと別れる際に食料保管庫から分けてもらった物資のうち、水分補給ができるサボテンスープを飲んで必死に耐えながら進んでいるが、それでも汗が滝のように流れて来てすぐに喉が渇いてしまう。

 それどころか少し気を抜いただけで目の前がクラクラしてくる気さえして、そのたびに治療薬であるメディカルブリューを飲む羽目になる。

 

 そんな強引とも言える方法で何とかこの熱気の中を進んでいくことができているが、恐らくそのような対策をできていないあの人達はまだ生きているのだろうか?

 あの人達に対する心配さと……命掛けで無駄足を踏んでいるような不安が入り混じり、今すぐにでも引き返したいような衝動が不安と共に胸を突いてくる。

 ……ここで死んだら今までの全部が無駄になる……このARKという場所では自分の命を一番に考えるべきだ……フローラを生き返らせるためにもここで俺は死んではいけないのでは……頭の片隅にチラリと冷静な判断とも情けない臆病風とも言える考えがよぎる。

 

 しかし既に俺は覚悟を決めている……右手首に浮かび上がるフローラも心配そうではあるが、こうして人を見捨てられない俺に呆れるどころか応援してくれている。

 だから俺は自分の行動が間違っていないと自分に言い聞かせながら、必死にあの人達が辿ったであろう方向へと進み続けた。

 そしてついに俺はあの人達を追いかけていた狼に追いつき、まずこいつらを始末にかかった。

 

 アルケンαに乗ったまま追従させているアルケンβに攻撃指示を出し、二匹揃って取りあえず手近な狼をかぎ爪で掴み上げた。

 そうして空中に持ち上げられてほぼ無防備になった狼にやはりほぼ一方的に攻撃を加えてあっさり始末すると、群れの残りも始末しようと地上に目を向けた……ところで何故かカルノン君がそいつらを血祭りにあげていた。

 何でハンスさんが追従させていたこの子がここに……ってそうだった、パララ君が動きやすいように地上の仲間達もこっちに追従させていたんだった。

 

 あの熱気のすさまじさと新たに見つけた生存者のせいでそのことをすっかり忘れていたが、そのまま移動したせいで動物たちは律儀に空を一直線に移動する俺に付いて来ようとしたのだろう。

 ただ飛行生物の足に陸上生物がそうそう追いつけるはずもなく、唯一足が速めなこの子だけが何とか追いついてきていて、先ほど俺がアルケンβのために出した攻撃指示に従って攻撃してくれていたのだろう。

 実際に狼を蹴散らした後でカルノンは俺の指示を待つようにこちらを見つめている。

 

 それに対して他の動物達の姿は軽く見回しても全く見当たらない……どうやら地形か何かに嵌ったか距離がありすぎて俺の姿を見失って、どこぞへさ迷ってしまっているようだ。

 ……別に貴重な生き物は居なかったから集めなおせばいいだけだけど……まあ今はそんなこと悩んでる場合じゃない、とにかく狼も倒したことだし後はあの人達に追いけば……っ!!!?

 な、何で……どうしてこのタイミングであんな場所にゴーレムが活動状態になって……ま、まさか……くそぉっ!! やるしかないのかっ!?




今回名前が出た動物

ダイアウルフ(狼)
アルゲンダヴィス(アルケンα、β)
カルノタウルス(カルノン君)
パラケラテリウム(パララ君)
ロックエレメンタル(ゴーレム)

現在の天候
スーパーヒート
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。