ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第512話

百八十八頁目

 

 住居の中へ飛び込むように入ると、ベッドでルゥちゃんを休ませていたらしいハンスさんがすぐに振り返ってきた。

 そして無事そうな俺を見て一瞬安堵したような顔を見せたが、腕の中でぐったりしている女性に気づくと慌てた様子で駆け寄ってきた。

 そのまま診察でもしそうなハンスさんにもう一人いるからと彼女を渡し、残るもう一人のこちらは金髪の女性をアルケンβから受け取り再び住居内へと戻るとハンスさんと俺用のベッドに二人を横たえさせた。

 

 その上で改めて二人の様子を確認すると、銀髪の女性の方は全身の皮膚に軽い擦り傷のような跡があちこちにできていたがやはり二人とも致命的とも言える目立った外傷は負っていないようだ。

 しかし未だに二人とも意識が戻るどころか呼吸すらいつ止まってもないほどか細いため、恐らく野生動物の襲撃ではなくあの恐ろしいほどの熱気の方が彼女達を蝕んでいたのだとわかる。

 実際に二人の様子を見たハンスさんは専門家ではないから詳しくは言えないと前置きしながらも、熱中症のような症状によって体力を極限まで消耗してしまっているようだと呟いた。

 

 だからできる限り涼しくした方が言いというが、その肝心の涼しくする方法がほとんど存在しないのが問題だった。

 尤も先ほどから周囲は常識的な範囲の熱気に納まっているため、粘土の住居内は体力の残っている俺達なら何とか過ごせる程度になっている。

 一応そのことを口にしてみるとハンスさん曰く、移動中もオベリスクに近づくほど涼しくなっていっていたから何かしらの理由でこの付近は温度管理がされているかもとのことだ。

 

 ただ既に意識を失うほどに重篤な症状になっているこの二人はもっと冷やさなければ不味いかもというのだ。

 だけれどクーラーを作れない今の俺達ではできることなどたかが知れている……水源から引き込んだ水を含ませた布で身体を拭いて冷やすぐらいのものだ。

 ……くそっ!! こんなことしかできないのかっ!? なんて俺達は無力なんだっ!!

 

百八十九頁目

 

 相変わらず二人は意識を取り戻すことはない……どころかだんだん呼吸が弱くなっていっているような気さえする。

 やはりこんな冷やし方では駄目なのか、それとも体力が既に限界を超えているせいで体調を整えようとする器官が働けていないのかもしれない。

 ……ああ、せめて一瞬でもいいから意識さえ戻ってくれればメディカルブリューで無理やり体力を回復させることができるのに。

 

 こうなったら無理やりに口を開かせて流し込むべきか……だけどこれだけ体力が消耗している状態だと、下手に飲み損ねたら咽る体力もなくそのまま息が詰まってしまうかもしれない。

 ……本当にどうしたらいいんだ? 今までこんな風に意識を失った状態で重症化した仲間を看護したことがなかったか……あっ!!?

 そ、そうだ思い出したっ!! 確かに俺にはそんな経験はないけれど……フローラは前に意識を失った俺にどうにかして薬を飲ませて看病した実績があったじゃないかっ!!

 

 あの時どうやって看病したのか何度か聞いてもフローラはさりげなくごまかされてしまっていたけれど、この状況に生かせるかもしれないのだから聞かないわけにはいかない。

 だから右手首に埋め込んだ鉱石をじっと見つめて浮かび上がったフローラのホログラムと見つめあうと、彼女は何故か恥ずかしそうにしながら……だけど仕方ないとばかりにジェスチャーであの時何をしたのか……えっ!? えぇっ!? そ、それって……く、口移しってことぉ!?




今回名前が出た動物

アルゲンダヴィス(アルケンα、β)
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