百九十四頁目
気になる点は多いけれど天候が元に戻ってしまった以上は検証のしようもない。
仕方なく住居内に引き返そうとしたが、唐突に獣たちの咆哮が聞こえてきた。
そして次の瞬間には石で作った防壁がめきめきと傷つく音が鳴り始めたではないか。
石造りの防壁はティラノサウルスですら傷つけられないほど頑丈である……それを傷つけられる野生生物といえば、ギガノトのような規格外な奴や酸を放つムカデのような例外を除けば特殊個体の奴ぐらいだ。
そう確信しつつも念のためアルケンαで空から防壁の外を視察したところ、思った通り一回り大きな体格をした特殊個体のラプトル二匹が通常のラプトルを何匹も配下の様に引き連れながら石の防壁を破壊せんと攻撃を繰り返していた。
……どうやら危惧していた通り、ARKシステムはこの場所に留まろうとする俺達を追い立てようとしているようだ。
その証拠とばかりに昨日ハンスさんが撃退した際には一頭しかいなかったはずの特殊個体ラプトルが今回は二匹に増えている。
特殊個体の動物自体は一応自然にも生まれてくるとは言え非常にレアなはずなのにだ。
しかもこの広い砂漠の中でピンポイントでこの拠点付近に二匹同時に生まれてくるなど、流石に偶然で片付けられる話ではないからだ。
……しかしこれはちょっと困ったことになったかもしれない。
護衛の動物は俺の指示ミスもあって先ほど女性達を救出する際にチリジリになってしまっている。
今この拠点にいる動物といえば連れて帰れたアルケンαとβ、移動拠点のパララ君、そして草食だから護衛にし辛いと判断して残していったカンガちゃんとモスラが二匹、それとアンキロ君だけだ。
アルケン達は肉食だし結構力強いから十分戦力になるとはいえ、特殊個体が二匹混じった恐竜軍団を相手となると……流石に厳しいかもしれない。
他に戦力になりそうな動物といえば巨体で移動拠点を兼ねているパララ君だろうけれど、失った際の損失が多すぎるのであまり前線には立たせたくない。
まあ最悪の場合はパララ君も戦線に組み込む必要があるかもしれないが、それでも俺の手には高品質の弓矢もあるのだから防壁を上手く利用して立ち回れば今回の襲撃は何とか凌げる……はずだ。
……右手首が疼いたかと思うと、心配そうな顔のフローラのホログラムが浮かび上がってきた。
どうやら前の島で動物達の襲撃により拠点を潰された時のことを思い出して不安になっているようだ。
大丈夫だよフローラ、あの時と違ってスピノみたいな大型はいないし……きっと乗り切れるさ。
今回名前が出た動物
ティラノサウルス
ギガノトサウルス
アースロプレウラ(酸を放つムカデ)
アルゲンダヴィス(アルケンα、β)
αラプトル(特殊個体ラプトル)
ユタラプトル
パラケラテリウム(パララ君)
プロコプトドン(カンガちゃん)
リマントリア(モスラ)
アンキロサウルス