二百四頁目
当たり前だが自分たちの事情を話し終えたところでキャシーは交代とばかりに俺達に色々と尋ねてきた。
俺達の事情からこの砂漠がどういうところなのかなど、知っていることがあれば何でも教えて欲しいと言う。
その気持ちは尤もだし、できれば応えてあげたいところでもある。
実際に前はフローラを始めとした仲間達にあった際は、下手に隠し事をしたら不信感が芽生えかねないからと聞かれた時点で知りうること全てを話していた。
だけどあの時は殆どの情報が俺の立てた仮説であり、別に信じなくてもいいという前提があったからそこまで混乱を招かなくて済んだような気がする。
……もっと言えば当時の俺はまだ先達者様の日記などで知りえた情報からの推察に対して自分自身でも半信半疑であった。
だからこそ最初のうちは色々と落ち込みそうになっても真実は違うかもしれないと自分に言い聞かせることで踏ん張ってこれた。
しかし今となっては……前の島を攻略する際に自分のいるARKの深淵を実際にこの目で見て、この砂漠へ転移するところまで経験した上で未来人のハンスさんからの情報で裏取りまでできてしまっている。
つまりは彼女達にとって受け入れがたい事実だったとしても、何かの間違いかもしれないとごまかしたりはできないのだ。
だけどこの世界の真実は残酷だ……自分達が暮らしていた日常は遥か昔の話であり地球上の文明は全て滅んでいて、またここにいる動物は自分達も含めて全てがクローンであり記憶を植え付けられた偽物に過ぎず、帰る場所などどこにも存在しない。
こんな残酷な現実をいきなり彼女達に全て伝えて大丈夫なのか?
……これらの事実を段階を踏んで知っていった俺ですら何度絶望したことか……それどころかフローラという愛しい相手に出会えなければ自ら命を絶っていたかもしれないほどだ。
そう考えるともう少しこの場所で日々を過ごし様々な経験を積ませて……サバイバルにも慣れて心身ともにタフになっていく中で段階を踏みつつ教えていくのがベストな気がするのだが……?
二百五頁目
色々と悩ましいところであるが、結局は俺一人で結論を出せそうになく後でハンスさんやオウ・ホウさんと相談の下に決めることにした。
だからキャシーには悪いと思いつつ、どうせ事情を説明するなら一度に済ませたいという口実でもう一人のソフィアが目覚めてから説明するという形でこの場は収めることにした。
……その言い訳を口にする前で少しだけ俺が考え込んでいたためか、その様子を見ていたキャシーも何かしら察したようで、確かにソフィアと一緒に聞いた方がよさそうですねと受け入れてくれた。
気が付いたらこんな危険極まりない場所で目を覚まし命の危険にも見舞われている彼女の身になってみれば、すぐにでも何がどうなっているのか知りたくて仕方がないはずなのに、こちらの事情を汲んでくれるところを見ると本当に良い人のようだ。
そんな彼女に理由があるとはいえ隠し事をしていることを申し訳なく思い、代わりにとばかりにこの拠点にある設備は自由に使っていいからと説明していくことにした。
浴槽にトイレ、彼女たち用に作ったベッド、また着替えように作った布の服の予備などを入れてある収納ボックス、そして飲み物から食事まで保管してある食料保管庫などの存在を教えてそれらは中身も含めて自由に使っていいと伝えていく。
するとキャシーはそれら一つ一つの存在に感激したように目を輝かせていったが、具体的な場所を説明しようと拠点内を案内しようとしたがキャシーはそれもソフィアが目覚めてから一緒に聞くと言ってこの場から動こうとしなかった。
よっぽどソフィアのことを大事な存在だと思っているのだろう……事実ソフィアが時折寝言でキャシーの名前を呟くたびに愛おしそうにその手を取って傍に居ると呟いている。
……お互いにまだ出会ったばかりのはずなのに、これだけお互いを想い合える仲間想いの女性達ならば、ARKの真実に絶望さえしなければきっと俺達とも協力し合っていけるはずだ。