二百十三頁目
焦って着替えを持っていき忘れたと呟く恥ずかしそうなキャシーの声が再び閉じられたシャワールームの内部から聞こえてくる。
次いで蚊の鳴くような声ではしたないところをお見せしましたと呟く別の女性の声も聞こえてきた。
恐らく彼女がソフィアなのだろうが、この声の弱々しさは性格……だけが原因ではないようだ。
尤も今の俺にとって大事なのは彼女達の格好の方であり、ルゥさんに協力してもらい新しい布の服を渡して着替えてもらうことにした。
その後改めてシャワールームから出てきた二人にお礼を言われたところでようやく大丈夫そうだと判断して振り返ることができた。
果たして恥ずかしそうに二人揃って顔を赤くしている彼女達はしっかりと新しい布の服に着替えており、後ろに見えるシャワールームの床にはビショビショになっている古い布の服が落ちていた。
……ハンスさんが腰を抜かすほど驚いているところから見ても、多分さっきはあのビショビショで濡れ透け状態の布の服が肌に張り付いた状態で出てきたんだろうなぁ。
彼の様子で咄嗟に察することができたから命拾いしたが……いや流石にこれは大げさだろうけど、少なくとも物凄く痛い思いをしたのは間違いない。
まあそれはともかく、まさかキャシーはともかくソフィアまで一緒に水浴びをしているとは思わなかった。
てっきり目を覚ましたらまずは一声ぐらいかけてくれるものかと思っていたが、その疑問には何だか足元がおぼつかなそうなソフィアを支えながらキャシーが自分から答えてくれた。
何でも意識のない状態でソフィアはキャシー名前をうわ言の様に呼んでいたが、少しすると熱いとか苦しいとかいう呻き声も上げていたのだという。
そこでキャシーが実際におでこに手を当てて見たところ、本当に熱が籠っているのが分かり……同時に全身に汗をかいていて布の服がぐっしょり濡れていたという。
それを見てキャシーはどうにかして少しでも身体を冷やしたほうがいいと思い、また汗を流す意味も兼ねて慌てて彼女を連れてシャワールームに向かったという。
そして最初は軽く水を浸すぐらいの気持ちで、自分の服を布代わりにして水を浸して拭いていたのだがその最中でソフィアが目を覚ましたのだという。
ようやく目を覚ましてくれたソフィアに感激したキャシーは思わずいつものように彼女を抱きしめてしまい、その際に思いっきりシャワーの水を浴びて二人とも水浸しになり……せっかくだしまだソフィアも身体が熱いから冷やしたいということもありそのまま二人で水浴びし始めたそうだ。
果たして水で身体を冷やしたのが良かったのかソフィアの体調も少しはマシになってきて、じゃあそろそろ終わりにしようかと思ったが、そこでようやくキャシーは着替えを忘れたことに気が付いたらしい。
しかも勢いのまま水浴びしたせいで元々着ていた布の服は二人ともビショビショで、だからと言って裸で出るわけにもいかず仕方なくそれを身に着けたまま外に出た……ところでちょうどそこで会話していた俺達と対面してしまったというわけだ。
……うん、次からはシャワールーム内に予備の布の服を常に置いておくことにしよう……ってそれはそれとしてソフィアの体調が少し心配だなぁ。
身体を冷やしたら少しマシになったというし熱中症みたいなものなのかもしれないが、とにかく彼女の容体には今しばらく十分気を配ることにしよう。