二百十四頁目
ワチャワチャしているうちにすっかり辺りは暗くなってしまい、常につけてある住居の四隅に設置されている最低限の篝火だけが辺りを照らしている状態だった。
もちろんこれでは薄暗くて心許ないので、拠点の中心にある焚火に加えて一定距離ごとに設置してある光源用の篝火全てに火をともしていく。
すると夜の闇が拠点内だけ一時的に照らし晴らされて独特の雰囲気に包まれていった。
そんな中、もう幼児は終わったと判断したらしいルゥちゃんが一言俺に許可を取ったかと思うと、いつものように焚火の前に行って美しく舞い始める。
相変わらず何とも言えぬ幻想的な光景だが、それらを始めてみるキャシーとソフィアはそれこそ感慨深そうにルゥちゃんの踊りを眺めていた。
……うん、そうだよなぁ……こうして安全を確保した上で炎に照らされる夜のこの世界は初めて体験すると妙に感動するんだよなぁ。
まして今はルゥちゃんの舞いまで付いているのだから、魅入られてしまっても無理のない話だ。
果たしてルゥちゃんが踊り終わると、二人は自然にパチパチと拍手をしていた。
そして少し遅れて正気に戻ったらしいキャシーが感激した様子でルゥちゃんに抱き着こうとしたが、ふらつくソフィアに気づいて慌てて支え直す羽目になる。
あの調子だともしソフィアが元気だったらキャシーは……いや何なら二人揃ってその場の勢いで一緒に踊り始めてたかもしれないなぁ。
二百十五頁目
ルゥちゃんが踊りの後にあげる祈りの言葉、という名の某怪獣の歌が始まったが、これもまたキャシーとソフィアは感慨深そうに眺めていた。
不思議な韻律だとか、神秘的だとか口にしているけれど真実を知っている身としてはその……何というか、色々と謝りたくなってくる。
もちろんそんな俺の胸の内など知る由もない皆は、歌い終わったルゥちゃんをまたしてもパチパチと褒めたたえていた。
そしてキャシーとソフィアはこちらに戻ってきたルゥちゃんを褒めたたえながら、今の歌と踊りについて尋ね始めた。
……もしこの流れで俺に歌の由来を聞かれたらどうすればいいのだろう、なんてくだらないことすら考えていた俺は大事なことを忘れていた。
そうこの時点まではまだ俺の心情を除けば微笑ましいものだったのだ……だから予想できたはずの展開を俺達は避けられなかった。
……すっかり忘れていたんだ、最近のルゥちゃんの調子が良かったから……彼女の特殊な出自と育ちについて。
キャシーとソフィアに色々と尋ねられたルゥちゃんは少し首を傾げたかと思うと、当たり前のように自分が生贄の巫女でありそれに関する儀式だということを口にしてしまったのだ。
もちろんそんな物騒な内容を聞いたキャシー達は……いや油断していた俺達も含めてその場にいた皆は固まってしまう。
そんな俺達に向かってルゥちゃんは……少しはマシになってきているけれどまだ感情の薄い眼差しを向けてくるばかりだった。