百七十二頁目
建造物の跡地の周りにはステゴサウルスによく似たフォルムの、だけど背中には背びれではなく鋭い棘が生えている奴がウロウロしていた。
恐らくは草食だろうけれど、また近づきすぎてテリ君みたいに襲われたらたまらない。
だから慎重に距離を取りながら建造物の跡地を探索して、予想通り日記を見つけることに成功した。
これも前に見たガイウス・マルケルス・ネルヴァという軍人らしい人が書いたものだった。
どうやらここに来たばかりの頃の物のようで、元の地と同じ様な軍隊を一から作り直そうという決意の記述だった。
然し重要なのはそこではない、それよりも俺が気になったのはこの人がやって来た場所……というか国の事だった。
ここに書かれている内容が本当ならば彼はローマ帝国からやってきたようだ……それは恐竜が居た頃よりは未来だけれど、俺のいた時代ではとっくの昔に滅んでいるはずの国だ。
流石に冗談だと思いたい……だけど、こんなしっかりとした文字を気が狂った人に書けるとは思えない。
となるとこれは……前に俺が推測した予想が思い出される。
人間は絶滅動物……過去から蘇らせ……勘弁してくれ本当に……。
百七十三頁目
何やら物凄くやる気がそがれてしまったが、日が暮れかけている状態で落ち込み続けるわけにもいかない。
とにかく一度山肌の拠点に戻ろうとテラ君の背中に乗り、コンパスと自作した地図を元に移動を開始する。
当然迷うことなく帰宅した俺を、仲間たちが出迎えるけれど俺は何を言う気にもならずベッドに横になった。
そして改めて日記について、この島について……俺自身について色々と考え始める。
絶滅動物ばかりが集う島……簡単に仲間になる異様に頭の良い動物たち……経験も無いのに建物を作り上げれてしまう自分。
文字の種類に関わらず読み下せてしまう事実に左手に埋め込まれたオベリスクと同じ材質でできているであろう鉱石。
やはりここは……いや今という時代は……そして俺という存在は……考えたくない。
ひたすらに絶望的な心境だ……前に拠点や素材、そして仲間を失った時とは違う、それ以上に重圧的で圧倒的な絶望だ。
だってそれが本当ならば、俺にはもう帰る場所は……救いはないのだから。
百七十四頁目
何もやる気が起きなくて、ひたすらにベッドの上で眠り続けていると外からティラノの咆哮が聞こえてきた。
のそのそと這い出てそちらへ視線を投げかけると、想像通りティラノが一匹こっちへ近づいてこようとしている所だった。
前に考えた仮説、一カ所に留まり続けていると追い出そうと危険性が高まっていくという推論はどうやら正しかったようだ。
あいつをどうやって倒そうか、或いは捕まえよう考えるけれど頭はまるで働かない。
むしろもう抵抗なんかしないでやられてしまえばとすら思ってしまう……こんな島に管理されるぐらいならばいっそ楽に……。
だけど防壁に齧りつかれて、怯えるモソちゃん達の悲鳴が聞こえたら身体が自然に動き出していた。
壁の内側から麻酔矢を放ちつつ、防壁を破られた時には壁になってもらうべくディ君を傍に待機させておく。
……何か間違いを犯しているような気がするけれど今は頭が回らない。
とにかく今を乗り切るべく、麻酔矢で攻撃を続けよう。
【今回名前が出た動物】
ケントロサウルス(ステゴサウルスに似たフォルムの恐竜)
テリジノサウルス(テリ君)
プテラノドン(テラ君)
ディプロドクス(ディ君)
ティラノサウルス
【今回登場した日記】
ガイウス・マルケルス・ネルヴァの記録(#2)