二百二十二頁目
キャシー達のことが気になり余りよく眠れなかったが、容赦なく朝はやってきた。
果たしてキャシー達は冷静になっているだろうか……また気持ちが落ち着いていたとして俺達の話をどこまで信じてくれただろうか。
全く信じてくれなくてもう俺達とは一緒にやっていけないと判断したとして、ここに残ったら動物の襲撃を受けることになる。
その襲撃を乗り越えられるかどうか……また逆に俺達の話を完全に信じた場合でも帰る場所も迎えてくれる家族も何もかもが残っていないという絶望から生きることを諦めてはいないか。
不安ばかりが頭の中をモヤモヤと渦巻くが、その答えは今目の前にある一階のドアの向こうにある。
果たして向こうがどうなっているのか知るのが少し恐ろしい気がするが、だからと言って声を掛けないわけにもいかない。
だから軽く深呼吸して覚悟を決めてドアを開く……のは仮にも女性部屋に対しては不味いと思いノックをして声をかけた。
すると少しだけ中から音を殺すように動く人の気配が伝わってきたかと思うと、ドア越しにやはり小さくも丁寧な口調でこちらが誰かを問う声が聞こえてきた。
そして俺が名前を告げるとまたしても静かに鍵を開ける音が聞こえたかと思うと、軽く扉を開けてソフィアが顔を覗かせてきた。
彼女は俺の姿を確認して……安堵と思わしき息をつくと、まだ中で二人寝ているからと自ら外に出て再び静かに扉を閉めた後で俺と向き直った。
その様子は昨夜に比べてかなり落ち着いているようであり、また俺との距離感も精神的にはその態度から……また物理的な意味でもやはり昨夜よりずっとマシになっていた。
……正直言って最悪の事態に備えていただけに、ありがたいことだが何というか肩透かしを食らったような気になってしまう。
お陰で威勢が削がれてしまったというか、急にどう話しかけたらいいかわからなくなり取りあえず体調について軽く聞いてみることにした。
するとソフィアは少し疲れている気はするけれどもう普通に動けますと、こちらを安心させるかのように柔らかく微笑みながら頷きかけてくれた。
……何だかここまで落ち着いているところを見ると、逆に不安すら感じてくる。
俺ですらARKの真実を知った時は絶望していたというのに……昨夜、あの後で俺の知らないところで何かあったのだろうか?
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、彼女は重ねて色々と心配とご迷惑をおかけして申し訳ありませんと丁寧な口調で……だけど余り余所余所しさは感じさせない声で呟きながら優雅に頭を下げて見せるのだった。