二百二十五頁目
少しして正気に戻ったソフィアに改めて自分達は移動するけれど、一緒に来るかどうか尋ねてみた。
もちろんここに残りたいというのなら……まあその場合は俺達と距離を置きたいからという理由だろうけれど、とにかくその場合でもこの拠点は自由に使っていいし非常時の逃走手段としてアルケン達を残しておくことも告げておいた。
すると彼女は一応キャシーと相談するつもりだけれどと前置きした上で、もしご迷惑でないのならばしばらくの間ご一緒させてほしいと考えていますと答えてきた。
……一時的にかもしれないが同行する気になっているところを見ると、俺達は今すぐ離れないといけないほどの危険人物だとは思われていないようだ。
そうすると今の彼女の態度も上辺だけのものではなく、そこまで警戒する必要がないと思って普通に接してくれているのだろう。
……何だか色々と最悪の事態を想定して悩んでいたのが馬鹿らしくなってくるけど、まあありがたい展開なのだから良しとしよう。
とにかく一緒に行動してくれると言ってくれたのなら後は移動するための準備に専念するだけだ。
そのためにもソフィアには早めに出発するためにも、キャシー達を起こして彼女達と共に支度を済ませておいて欲しいと頼むとすぐに頷いて見せてくれた。
それどころか何か自分達にも手伝えることがありませんかと聞いてくれるほどだった。
ありがたい申し入れに感謝するが、引っ越しの支度自体はもう既に昨日の時点で殆ど済んでいる。
後は消費したメディカルブリューを始めとした物資の補填と追従させる動物の管理ぐらいなもので、わざわざ彼女達の手を煩わせるほどのことではないと伝えて支度が済み次第先にルゥちゃんを連れてパララ君に乗っておいて欲しいとだけお願いするのだった。
二百二十六頁目
何度も何度も念入りにミッキー達の反応を確認して天候の変化が起こらないことを確認してから、俺はパララ君の手綱を操った。
ズシンズシンと足音を鳴らしながらパララ君は移動を開始し、自然と背中に乗っている拠点も動き出しその振動でルゥちゃんを除く女性陣が声を上げた。
尤もその声はどこか楽しそうであり、実際に彼女達は住居内の窓から外を覗き込んでその光景を見て笑顔を浮かべていた。
むしろ困惑するような声を上げているのは空の上を行くハンスさんであり、操られているアルケン達はその心情を反映するかのように航路がふら付いている。
そう昨日出発した時と違って、今回俺とハンスさんは役割を交換しているのだ。
女性陣を載せた状態で陸上動物を追従させているパララ君を俺が操り、ハンスさんは飛行生物であるアルケンαに乗ってβを率いつつ空を飛んで遠くまで偵察しながら一緒に移動しているのだ。
こうなった理由はハンスさんが、昨日急いで移動しようとした際に仲間の動物が足かせとなって上手くパララ君を操れなかったことを反省して同じようなことにならないよう役割を変えようと提案してきたからだ。
また単純にそろそろ飛行生物にも本格的に慣れた方が良いから練習がてら長距離移動もしてみたいとかそれらしい理由も並べ立てられたりもして、特に逆らう理由もないし下手に反論して無駄な時間を使いたくないから受け入れたのだ。
……けど多分本音としては女性だけの空間に取り残されるのが嫌だったからじゃないだろうか?
あの後、移動する直前に目を覚ましたキャシーを含めた全員で一度顔を合わせることがあったがハンスさんは女性陣に見られると顔を赤くして露骨に目をそらしてしまうのだ。
流石に幾ら女性慣れしていないとはいえ過剰反応すぎる気もしたが、同時に初日にキャシーから受けたハグが衝撃的過ぎたと思えば納得できる気もした。
とにかくハンスさんは彼女達の傍に居ると落ち着かない様子なのは事実で、だからこそ逃げるように飛行生物に乗っていっても止めるような真似はできなかった。
……まだまだふら付いているとはいえ流石にアルケン達なら無茶な操縦をしてもスタミナ切れを起こしたりしないだろうし墜落の心配はないと思いたいが、本当にこれでよかったのだろうか?
今回名前が出た動物
アルゲンダヴィス(アルケン達)
パラケラテリウム(パララ君)
トビネズミ(ミッキー)