二百二十七頁目
俺の危惧とは裏腹に、今回の旅路は平和そのものだった。
天候がいきなり変わったりしないし、移動拠点のパララ君を襲うほどの野生動物の姿もない。
お陰で防熱効果のあるレンガ造りの建材に囲まれてながらゆっくりと安全に道を進めている状態は結構快適であった。
それこそパララ君の背が高いからそこそこ遠くまで見通せる状態なのと合わせて、何というか動物園を進むバスの運転手になったような気分だ。
実際に後ろではキャシーとソフィアが窓から外を眺めては、新しい動物を見つけるたびに驚いたり怯えたり悲しんだり……またたまに笑い合ったりと、様々な反応を見せている。
……昨夜はあれだけ緊迫してたのに、今度はのほほんとしすぎていて逆に気が緩んできて眠気が顔を覗かせそうになる。
こうなるとパララ君が道を進む振動も心地よく感じてしまい、寝落ちしそうになった俺は気を紛らわす意味も兼ねて口を動かすことにした。
内容は何でもよかったがせっかくだし後ろの二人に説明するように、目についた動物の知識を適当に語り始める俺。
彼女達が肉食鳥だと指させば、それはラプトルという名の頭のいい恐竜でよく群れで行動していることを教えてやり、今度は発光する豚に驚く声が上がり、そいつはダエオドンという名前で仲間を癒す不思議な力を発揮する際に発行するだとか……良い眠気覚ましになっているけれど、何だか本格的に動物園の職員になったような気分だ。
二百二十八頁目
俺の説明に二人とも楽しそうに聞き入っていたが、ふとソフィアが『恐竜』という存在が何なのか尋ねてきた。
そういえば昔の人間なのだから恐竜を知らない人が居ても不思議ではないと思いそれも説明……しようとしたが、その前にキャシーが知ってるとばかりに声を上げた。
彼女曰く、少し前に父親の知り合いであるリチャードだかオーウェンだかという人が恐ろしいトカゲの化石を発掘して大騒ぎになったのだという。
……なんか聞き覚えのあるような無い様な名前だけれど、もしかしなくてもその人って有名人なのではないだろうか?
そんなことを考える俺の後ろでキャシーは続けてその恐竜と呼ばれるようになった化石だが偽物なのではとの疑いの声も大きかったとのことだが、実際に目の前で生きているところを見てやはり真実だったんデスネと感慨深そうな声を漏らした。
しかし同時に化石でしか見つからなかった恐竜……すなわち大昔の存在であるはずの生き物が動いているところに自らの境遇を思い出したのか、どんどん声が小さくなっていった。
結構平静そうに見えたけれどやっぱり内心では、自分達人類がすでに絶滅していて、自分もまた記憶だけ持たされたクローン人間なのにかなりのショックを受けていたようだ。
果たしてそんなキャシーを見てソフィアも何とも言えない様子で俯いてしまい、そんな二人をベッドに横たわりながらルゥちゃんが不思議そうに眺めていた。
今回名前が出た動物
パラケラテリウム(パララ君)
ユタラプトル
ダエオドン(豚)