ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第537話

二百二十九頁目

 

 二人が黙り込むと途端に空気が重く感じてくるが、まだ元の拠点にたどり着くまではもう少しかかる。

 パララ君が遅いというのもあるが足を取られないよう道を選ぶ必要があるのも大きい。

 実際に空の上を最短ルートで進めるアルケン達ならあっという間だったし、多分ケツァ君でも……やっぱり同じ移動拠点でも飛行拠点の方が遥かに使い勝手がよさそうだ。

 

 できればここでも捕まえたいところだが、意外とレアな個体だから見つけるのは苦労しそうだ。

 ……なんてどうでもいいことを考えて気まずさを忘れようとしていたところ、そういえばとキャシーがわざとらしく明るい声を発した。

 そして俺に向かって次に向かう拠点はどんなところなのかと尋ねてきた。

 

 多分あまり落ち込まないように強引に話題を変えようというのだろうけれど、このまま重苦しい沈黙に耐えるよりはずっとマシだ。

 果たしてソフィアも同じ気持ちのようキャシーの話題に乗る様に、どんな動物が待っているのかとかどれぐらい広いのかとか色々と口にしてくる。

 ……多分まだ二人とも、自分の置かれている状況をあまり思い出したくないというか考えたくないんだろうな。

 

 その気持ちが痛いほど良く分かる俺は、あえて何も言わずに二人の質問に答えていくのだった……が、予想に反してこれもまた地雷だったようだ。

 尤も前ほど深刻なことではないのだが、今向かっている俺が最初に作った拠点の詳細を知るにつれて二人とも露骨に意気消沈していっているのだ。

 どうやら先ほどまで居たオベリスクの麓に作った拠点と同等ぐらいの拠点だと思って期待していたらしい。

 

 だから規模の小ささは元より、特に水源がないことが一番ショックだったようでそれを知った時は固まってしまい少しだけ沈黙していたほどだ。

 ……考えてみればルゥちゃんと違ってまともな感性の女性なんだから水浴びも出来なければトイレもないあの場所で過ごすのはきついかもしれないなぁ。

 

二百三十頁目

 

 少しして正気に戻った二人はやはり落ち込んでいるようであったが、俺に文句を言ったりはしなかった。

 むしろこんな砂漠なんだから仕方ないと諦めたように自分に言い聞かせるように呟くばかりだ。

 それでもちょっと未練がましく聞こえるのは、やはり先ほど水を使い放題な環境を味わった後だからだろう。

 

 だから二人の態度に対して別に我儘だなどとは思わず、むしろ悪いことをした気にすらなってくる。

 しかしだからと言ってあそこ以外に水源が傍にある拠点がないからどうしようも……いや、そういえば一つだけあるじゃないか。

 山に希少素材を採取しに行く際、途中に見つけた水源……というか水たまりの傍に簡易拠点を作ったのを思い出す。

 

 恐らくARKの環境システム的に、あのいつ蒸発してもおかしくなさそうな水たまりも管理されているだろうから多分好きなだけ使えるはずだ。

 朝一で出たお陰で、多分そっちまで移動する時間はあるだろうけれど……当初の目的地である拠点に付いたらハンスさんを含めたみんなと相談してどっちで過ごすか決めることにしよう。

 ……なんて考えながら当のハンスさんが何か見つけたとばかりに空の上から声をかけてきた。

 

 彼が指し示す方角はちょうど進もうとしている方だが、一体何を見つけたんだろうか?




今回名前が出た動物

パラケラテリウム(パララ君)
アルケンダヴィス(アルケン達)
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