ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第538話

二百三十一頁目

 

 ちょうど上り坂だったこともあり視界が遮られていたが、少し進んだところで彼が見つけたものが明らかになった。

 果たしてその方向には俺が最初に作った拠点があった……のだが、何か違和感がある。

 だが何故かこのまま進むのは不味いという思いが猛烈な勢いで湧き上がってきた。

 

 だからすぐにパララ君の歩みを止めると、違和感の正体を探るべく望遠鏡を使ってこの場所から拠点を色々と調べてみることにした。

 唐突な俺の行動にキャシー達は驚いたような声で何かあったのか尋ねてくるが、その答えをまだ知らないのだから何を言うこともできない。

 しかし少しして違和感の正体に気が付いた俺は、望遠鏡から目を放すのと同時に思わず舌打ちしてしまった。

 

 何故ならあの引っ越そうとしていた拠点の傍に見覚えのある……だけどあの位置には絶対になかったと断言できる大きさの巨石が鎮座していたのだ。

 あれは間違いなく擬態したゴーレムだ……山で何体も見て細かい色や形で見分けられるようになっているお陰ではっきりわかる。

 ……寄りにもよってあいつがあんな所にいるなんて最悪だ、これじゃああそこに近づけないっ!!

 

 そう思って意気消沈する俺の傍に、フラフラしながらアルケンに乗ったハンスさんが近づいてきた。

 飛行生物を扱いきれていないせいでパララ君が止まるまで近づけなかったらしいが、足を止めたお陰で何とか拠点の上にあるスペースに着地できたようだ。

 そしてあの拠点の手前にある赤い痕が何かわかるのかと尋ねて来て……慌てて視線を上げて彼の言うところを望遠鏡で確認してみれば、余りの熱気に殆ど蒸発している血痕とほんの僅かに残る肉片の痕があった。

 

 どうやらハンスさんはゴーレムを見分けられなかったがために拠点の方は何も問題ないと注視することがなく、お陰で逆に俺がそっちに気を取られて見落としていたこの微かな痕跡の方に気づけたようだ。

 それらの情報を合わせると恐らくどこかにいたゴーレムが何かしらの獲物を追いかけてあの赤い痕のところで止めを刺し、そのまま少し先のあの場所で再び擬態を開始したらしいと推測できた。

 ……この辺にいたゴーレムといえば俺がカルノンを囮に使って追い払った一体だけ……つまりあの赤い血痕の主は……もしかしてご主人様である俺の匂いか何かを辿ってここまで逃げて来たのかも………………

 

二百三十二頁目

 

 少しばかり黙祷してしまった俺だが、誰も何かを言うこともなく黙って見守っていてくれた。

 ありがたい限りだが、終わった後で皆の顔を見回してみれば誰もかれもが……いやるうちゃん以外というべきだが、とにかく事情を聞きたそうな顔でこちらを見ていた。

 もちろんゴーレムに関する情報は命の危険にかかわる問題なため周知しないわけにもいかず、何よりまだ完全な信頼関係を構築できたとはいいがたいキャシー達には不信感を募らせないためにもできる限り隠し事をすべきではない。

 

 だからありのままに、それこそ囮に使ったカルノンの存在も併せて説明すると女性陣もまた自然と自分の命を救うための犠牲になったカルノンのためにか目を閉じた。

 それに対してハンスさんはゴーレムがすぐ傍に居る事実の方が気になったようで、本当にあれが擬態したゴーレムなのかともしそうなら戦うか戻るのかとか色々と……要するにどうするのかと尋ねてくる。

 ……そういえばハンスさんはまだゴーレムを直接見たことはなかったはずだし、そりゃあ本物かどうかも気になればその戦闘力も駆除できるレベルなのかどうかも知りたいだろうなぁ。

 

 またそこで黙祷を終えたらしいソフィアも話に加わってきてゴーレム……すなわち生き物のように動く岩の存在が本当に実在したのですかと困惑したような声を漏らした。

 もちろんキャシーも不思議そうにしているが、こちらは先ほど元の社会では実在が疑問視されていた恐竜を確認したばかりということもあってかそんな生き物もいただなんて世界は広かったんデスネーと感心したような声を発していた。

 ……できれば一度、あれが実際に動くところを見せてやりたいところだけれど今の戦力では下手に突っつくのもリスクが高い。

 

 だから取りあえず更に先へ進んだところにあるもう一つの水たまりの脇に作った小規模な拠点へ移動することを提案し、反対意見が出なかったところで早速移動することにした。

 その際にソフィア達が自分達も周りを見張って役に立ちたいと言ってきたので、どうせだし動物を操る最中は使えない望遠鏡を渡しておくことにした。

 そして彼女達が緊張しているようで楽しそうにも見える様子で後方を望遠鏡で覗き込んでいる姿を見て、嫌な空気が払しょくされた事実に安堵しつつ改めて移動に意識を集中すること……にしたのだがすぐに呼ばれて手を止める羽目になった。

 

 果たしてそちらに行って彼女達の差し出す望遠鏡を覗き込んでみれば、通り過ぎた拠点の周辺でゴーレムが大暴れしていた。

 見ればその近くには鱗粉を振りまきながら飛び去ろうとするモスラの同種とそれを襲おうとしてゴーレムを攻撃に巻き込んで起こしてしまったであろう狼の姿が……。

 ……ああっ!? ゴーレムの投げた大岩が俺達の拠点の防壁を破壊してるぅううっ!? な、何余計な真似してんだあの害悪狼どもぉおおおっ!!




今回名前が出た動物

パラケラテリウム(パララ君)
ロックエレメンタル(ゴーレム)
アルゲンダヴィス(アルケン達)
カルノタウルス(カルノン)
リマントリア(モスラの同種)
ダイアウルフ(狼)
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