二百三十三頁目
色々と口惜しい限りだが、今の戦力ではゴーレムに太刀打ちするなど夢のまた夢だ。
だから泣く泣く拠点から聞こえてくる破壊音を無視してその場を後にする。
本当に最悪だ……が、二つほど良かったこともあった。
一つは前に予想していた通りあのゴーレムには石造りの建材を破壊できる力があるということだ。
前の島ではティラノですら破壊できないため殆どの建築はあれで済ませていたが、こちらではゴーレムのが良そうなところに作る際はより強固な金属性の物を使った方が良いだろう。
もちろんあのゴーレムを仲間にできるとして、その時に使う罠も金属の建材を利用して作ることになるだろう。
そしてもう一つよかったのは、他の仲間達にゴーレムが実際に動くところを見せることができたことだ。
やはり自分の目で確認しているのとそうでないのでは、もしまたあいつと相対する羽目になった際に心構えを始めとして色々と違ってくる。
また特徴を覚えてもらえば、俺みたいに擬態している個体を見分けられるようになる。
果たしてあのゴーレムが人型になりその腕のような部分を振り回して狼を蹴散らしている姿を見て、キャシーとソフィア……後ついでに空の上から聞こえてくる声的にハンスさんも驚きを隠せないようだ。
特に女性陣はあっけにとられたような様子で、目の前の現実を確認しようとするかのように交互に望遠鏡を何度も何度も覗き込んでいる。
まあ恐竜を始めとした他の動物はサイズはともかく実在していても不思議ではないちゃんとした生身の生き物だったけど、それに対してゴーレムは野生には存在しえないような空想上の存在にしか見えないのだから過剰に反応するのも仕方がないだろう。
二百三十四頁目
しばらくして望遠鏡から目を放した彼女達はあんな危険生物がいる事実に放心する……かと思いきや、キャシーはむしろ興奮したように騒ぎ出した。
予想外の反応に戸惑う俺に対し身を乗り出してきて……まるで初めて会った時のような距離感まで顔を近づけると目を輝かせながらあいつも仲間にできるのですかと大声で問いかけてきた。
余りの勢いに戸惑いつつ、やってみないとわからないけどできる可能性はあると告げると、どうやってやるのかとか試す予定はあるのかとか幾つもの質問が飛び込んできた。
そんな彼女に落ち着くよう告げながら、どうしてそんな急に食いついてきたのか聞いてみるとそこで彼女ははっと正気に返ったようになり……一瞬ソフィアと目を合わせると悪戯っ子のように微笑んだ。
そして語り出したところ、実は牧場で生まれ育ったらしく動物を飼うのは得意というか大好きなようで元々俺がこれだけ動物を手懐けているのがずっと気になっていたらしい。
だけどソフィアが目を覚ますまでは聞く余裕もなくて、いざ余裕ができたらと思ったら昨夜のいざこざでとても聞けるような雰囲気ではなくなってしまった。
しかし朝になって背中に住居を背負って移動できるこんな巨大生物の背中に乗れて、また人を乗せて空を飛べるアルケン君を見て自分も乗りたいと思い、更に道中では様々な見知らない動物を見つけて内心結構興奮していたらしい。
その上であんな空想上にしかいないようなゴーレムを目の当たりにして、もしかして昔話だか神話だかで聞いたドラゴンのような凄いのも居てそれも仲間にできるのではと思うともう我慢できなくなったというのだ。
……そうか、そういえば俺も前の島で恐竜が仲間にできると知った時はティラノもいるなら飼いならしてやりたいって興奮していた。
だから彼女が興奮するのはわからなくはなかったけれど、ただドラゴンは前の島でオベリスクの奥に鎮座していたぐらいだし流石にいるとは思えないし居たとしても仲間にできたら強すぎるから許されないだろう。
そう告げるとキャシーは途端にガーンという効果音が見えそうなほどがっかりした様子を見せた……かと思いきや、でも可能性はありますよね?と未練がましく口にする始末だ。
どうやらよっぽどドラゴンを飼いならしたいらしい……まあ本当に気持ちはわからなくはないけれど、男ならいざ知らず女性の身でそこまでドラゴンに憧れているのはちょっと不思議だった。
実際にソフィアの方は俺達の騒ぎも上の空といった感じで、興奮するどころか深刻そうな顔で何か考え込んでいる様子だ。
そんな彼女だがキャシーがすがる様にドラゴンもワイバーンもきっといると思いますよね?と問いかけられると我に返ったように慌てて頷いてあの岩が幻覚じゃなかったんだからきっとドラゴンもワイバーンも燃える鳥も居るよと頷いて見せるのだった。
何だかキャシーの強引さに振り回されているソフィアに同情………………燃える鳥ってなんだ?
今回名前が出た動物
パラケラテリウム(パララ君)
ティラノサウルス
アルゲンダヴィス(アルケン君)
ドラゴン
ワイバーン?
●●●●●●(燃える鳥?)