百七十五頁目
流石のティラノも石の壁は砕くことが出来ないようだ。
おかげで想像していたよりずっと安全に追い返すことができたが、その段になってようやく自分が麻酔矢で攻撃していたことに気が付いた。
もちろん何の仕掛けもしていない以上、逃げ出したティラノに追いつく方法なんかなくて麻酔矢を無駄に消費しただけに終わってしまう。
本当に俺は何を考えているのだろう。
この麻酔矢を作るために沢山の生き物の命を奪ってきたというのに、そうして作った道具をこんなに無為に消費してしまうなんて。
だけど同時に思う、ここで命の尊さなど考えてどうするのだろうか?
絶滅動物を再現できる科学力で維持されているであろうこの環境のことだ、どうせこの生き物たちだって無限に生み出せるに違いない。
実際にあちこちの草木が即座に生えてくるのと同じことだ……多分俺だって死んでも代わりの誰かが出てくるだけだろう。
もう本当に何も頑張る気にもなれなくて、俺はまたベッドに戻って横になった。
ひょっとしてこの島に他の人間が残って居ないのは、皆もこれに気づいて自殺……いや流石にどうなのだろうか?
百七十六頁目
どんどん敵は手ごわくなる、今度は前に大鷲を横取りした肉食の群れが襲い掛かってきた。
更に上空からはその大鷲が、屋根のない防壁の内側に放し飼いになっている仲間達へと襲い掛かっている。
とりあえず中に入って来る大鷲はテリ君たちに迎撃してもらいつつ、外で壊せもしない石の壁に齧りついている奴らは俺が矢で追い払おうと試みる。
しかし備え付けの矢が殆どないせいで、外の肉食を倒し切ることは適わなかった。
仕方なく内側の大鷲を退治し終えたところで、テラ君に乗って移動して外の安全な場所で矢を確保しておこうと思う。
どうせ石の壁は壊せないのだ、ならばこうして多少離れていても仲間たちは平気だろう。
しかし絶望しているにも関わらず、何かしなければいけないのは本当に辛い。
いっそ自棄になってあいつらに食われても……いや物凄く痛そうだから止めておこう。
どうせ死ぬにしてももっと楽な死に方がいい、何かないだろうか?
百七十七頁目
どこで矢を作るための資源を回収しようか考えた俺は、結局最初の拠点へと戻ることにした。
あそこにはスピノと五匹のラプトルが居る……あの場所であいつらを護衛にしながら素材を回収すればいい。
そう考えたはいいけれど、全くやる気が起きない。
本当に俺は何をしているのだろうか。
こんなことを続けて何になるのか。
こんな場所で長生きするために抵抗してどうするのだろうか?
やっぱり楽に死ぬ方法を考えたほうがいい気がする。
確か何かの本で凍死は気持ちいいとか聞いた覚えがある。
なら北上してあの雪山地帯で……凍死する前に狼たちに食い殺されるほうが早そうだ。
他に何か、それこそ眠るように死ねる何か……麻酔薬でも飲んで……ああ、麻酔なら持っているじゃないか。
それで眠りに落ちたところを殺してもらえれば痛みは感じないんじゃないだろうか?
試してみるのもいいかもしれない、最初の拠点に戻ったら麻酔薬を作ってがぶ飲みしてみよう。
【今回名前が出た動物】
ティラノサウルス
アルゲンタビス(大鷲)
アロサウルス(肉食の群れ)
テリジノサウルス(テリ君)
プテラノドン(テラ君)
スピノサウルス
ユタラプトル