二百五十二頁目
感情豊かに俺の話に聞き入っていた皆だが、だんだん口数が少なくなっていった。
話を聞くのに集中しているのか、それとも流石に飽たり眠気が来たりして集中力が切れてきたのか……とにかく最後まで話し終えた時には室内は静まり返ってしまった。
そのせいか俺は今更ながらに自分語りに浸りすぎてしまったような気がして恥ずかしさがこみ上げてくる。
同時にずいぶん長い時間夜更かししていたせいか実際に俺を眠気が襲ってきて、これ幸いと誰かが口を開く前に睡眠を口実にして逃げるように二階へと移動した。
果たして事前に俺が想像した通りそこが俺とハンスさんの寝床であり、しっかり用意されていたベッドに潜り込むとそのまま睡魔に身を任せて眠ってしまうことにした。
……しかしこうして話すために思い返してみると、あっちの島でもこの砂漠に負けず劣らずの修羅場を潜り抜けていたんだなぁ。
本当に良い意味でも悪い意味でも思い出が多すぎる……だけど良い思い出のその殆どがフローラと共に過ごした時間だったのだとも改めて思い知らされる。
こうしてちゃんと話したことで俺自身もフローラへの愛おしさを再認識できたし、多分キャシー達にも右手首から見守ってくれている彼女への想いが伝わったと思う。
……尤も流石に深い仲になった辺りはボカシておいたけどこればっかりは……けどなんか思い出しちゃったなぁフローラの温もりとか可愛らしい喘……痛ぃっ!?
ち、ちょっとフローラぁ……君のこと考えてるんだからいいでしょぉ……まあ照れ隠しなのはわかるけど、いい加減痛み以外のコミュニケーションを……取れないからこそなんだろうけど……やっぱり早く何とかしてあげたいなぁ。
二百五十三頁目
夜更かししすぎたせいか目を覚ました時には太陽は高らかに世界を照らし出していた。
まだ昼時には程遠いけれど普段はまだ薄暗い時間帯から活動しているだけに寝坊したような気持ちになってしまう。
それでも隣のベッドでまだぐっすりと眠っている様子のハンスさんを見たら二度寝したい衝動が湧き上がりそうになってくる。
まあ別に引っ越し初日だし体調管理も大事だからもう少し寝てもいいんだけれど……冷たい水で顔でも洗ってシャキッとしてこよう。
そう思ってハンスさんを起こさないようにソロリソロリと部屋を出てシャワールームに向かう俺。
すると誰かが使用中らしく中から水音が聞こえてきていた。
ハンスさんが寝ている以上、中に入っているのは間違いなく女性の誰か……今回は中に更衣室も予備の着替えも常備されているからちゃんとした格好で出てくるはずだけれど、鉢合わせするのはどうにも気まずい。
だから仕方なく回れ右したのだが、すぐに水音が止まったかと思うとドアが開く音がした。
そしてパタンパタンという重量級の物体が飛び跳ねる音が後ろから俺を追いかけて……んんん?
女性陣の体重など知る由もないが、幾ら何でも彼女達が飛び跳ねたとしてもこんな物音が鳴るはずがない。
じゃあシャワールームから出てきたのは一体何なんなのだろうか……ちょっとホラー味を感じながらも恐る恐る振り返った俺の目に身体を震わせて水を払おうとするカンガの姿が飛び込んできた。
もちろんそのお腹の袋からはルゥちゃんの頭がぴょこんとはみ出ていて、そのすぐ傍をオウ・ホウさんが……なんかフラフラと疲れたような軌道で飛び交っているのだった。