二百六十二頁目
逃げるようにソフィアから離れ牧場に向かった俺は、残っているアルケン達に乗って出かけようとして……捕まえたばかりでサドルが付いていないのを思い出した。
そしてサドルの付けてあるアルケンαとβのうちαの方はキャシーが乗り回しているはずだ。
それでももう一頭のβが残っているはずなのだが何故か見当たらず……そこでようやくαに追従するよう命令したままであることを思い出した。
果たして見上げてみればかなりの高度から二頭分のアルケンの影が差しているではないか。
……あんな高いと呼んでも聞こえなさそうだし、これは俺の判断ミスだったなぁ。
まあ新しくサドルを作ればいいだけの話ではあるのだが、問題は必要素材の一つであるキチンやケラチンに該当する素材の蓄えは殆ど最初の拠点に置いてきてしまっていることだ。
何せ素材などは必要になれば新しく採取するか一足飛びして取ってくればいいと思っていたのだから。
こうなると選択肢としては他の動物に乗っていくぐらいしかないが、アルケンに比べると……なんて贅沢な悩みを抱えているとハンスさんが声をかけてきた。
どうやら彼は今起きたらしく、今日一日どう活動するのかの方針を話し合わないかというのだ。
取りあえず事情を説明し、相談はできればアルマジロなどの捕獲を終えてからにしたいが足がないから……と迷っていることを告げると、ハンスさんは当たり前のようにコレオちゃんに近づくと持たせてある荷物の中からこともなげにケラチンを差し出してきたではないか。
どうも昨日、俺がいない間に粘土を作る素材確保のためにキャシーと共にコレオちゃん達を護衛に少し外を出歩いて、その時に撃退した動物から取っておいたものらしい。
……やっぱり自主的に動ける人手が多いと凄く助かるなぁ、動物だけじゃ中々こうはいかないもんなぁ。
二百六十三頁目
作ったばかりのサドルを纏ったアルケンγ……ではなくもう面倒なので数字で管理することにしたアルケンⅢ君に跨り、残るⅣ・Ⅴ・六を護衛に連れて再び外へ繰り出す。
すると同じく空を飛んでいたキャシーがこちらに気づいたようで、ハンスさんとは違ってまっすぐな軌道でこちらへと近づいてきた。
本当に先ほど乗ったばかりとは思えない手綱裁きであったが、これは牧場か何かで鞍を付けた動物に乗りなれていたからだろう。
果たしてキャシーは勢いよく傍までやってきたと思うとアルケンα……いや改名してアルケンⅠに制止をかけて見事俺の真隣にぴたりと止まって見せた。
……アルケン達って急かして移動させた後だと止めようとしても慣性な動きが少し残るはずなのに、それを見越したうえで狙った位置に止められるなんて凄すぎないか?
しかも初乗りでこれなのだから、下手しなくてもすぐに俺より巧みに乗りこなしてしまいそうな……いや今の時点でもう越されているような気がする。
経験で遥かに勝るはずなのに動物の扱いで負けそうになりちょっと焦りそうになるが、キャシーはそんな俺の気持ちに気づくはずもなく物凄く楽しそうに空を飛ぶ気持ちよさを感情のままに叫んできた。
その際にインプラントか何かで自動的に翻訳されるはずが時折ワンダホーとかエキサイティンだとかいう風に聞こえた気がしたのは……気のせいということにしておこう。
そんな彼女に何とか事情を説明して急ぐからと移動を続けようとすると、引き留めて悪いとばかりに謝罪した後で自分もお手伝いしたいと申し出てくるのだった。
今回名前が出た動物
アルゲンダヴィス(アルケン達)