ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第561話

二百八十一頁目

 

 結構このARKに馴染んでいるように感じる二人だが、それでも過去の価値観というのはそう簡単に覆ったりはしないようだ。

 また何だかんだで二人は俺への敬意というか恩義というか、そういう思いも強いようでどうしても俺を差し置いて勝手に食事などをとることに抵抗があるという。

 だから取りあえずは朝昼晩と食事の時間を決めて、その時になったら監視塔にいる人が太鼓を叩いて決めておいた音頭……ならぬ合図を出して知らせることにした。

 

 これなら音が聞こえる範疇にいるのならすぐに戻って皆で食事を取ることができるし、逆に聞こえないほどの遠くまで出かけているのならばその時は流石に二人も各々食事を取ることに同意してくれた。

 その際に他にも危険が迫っている際やカプセルが落ちてきた時など、想定できる事態それぞれに対応する太鼓の音頭……だからじゃなくて鳴らし方も決めておくことにした。

 ……こうしてみると監視塔の上に太鼓というか音を鳴らせるものを配置するのって物凄く便利なんじゃ……どうして今まで思いつけなかったのか……

 

二百八十二頁目

 

 やはりちゃんと話し合う時間を取ってよかったと心の底から思う。

 食事などのルールを決めた後で改めてどう動くのかについての相談をし始めたのだが、そこで今さらながらに各々の最終目的がズレていることに気が付いた。

 まず俺はフローラを救うために『待つ者』とやらの言葉に従いARKの環境を制覇するつもりでいる。

 

 しかし当たり前だがこれは俺にとっての目的であり、他の人達にしてみれば関係のない話であった。

 もちろん皆協力してくれるつもりのようだが、所々で手を貸してもらうのはともかく最後の最後まで無理に付き合わせるわけにはいかない。

 何せARKの攻略とは鬼畜仕様の洞窟に潜ったりオベリスクの奥に潜むボスを倒したりと、危険極まりなく一歩間違えたら命を落とすような旅路なのだ。

 

 まあこのARKでは生きていくだけでも命掛けなのだが、どうせなら悔いが残らないよう自分達が心の底からやりたいことを見つけて欲しいと思う。

 ……少なくとも俺はフローラが生きていた頃……まだ大切な物を失っていなかった時は本気でこのARKを攻略しようなどとは考えもしなかったのだから、まだここに来たばかりで何も失っていない他の皆を最後まで巻き込むわけにはいかないと思うのだ。

 そんな俺に対してハンスさんは、多少とはいえ関わっていたプロジェクトであるARKのバグを直すことを当面の目的としているようだ。

 

 尤もARKのバグを直すためには島の奥にいたような管理者を倒す必要があるため、そういう意味では今のところ俺とハンスさんの行動方針は一緒だと言える。

 ただ彼はバグを直して正常化した後はこのARKの危険度も少しは落ち着くだろうし、そのままここに残って何故ARKのバグを起こしたのか本格的に調べていくつもりでいるらしい。

 つまりハンスさんとは上手く行ってもいかなくてもここでお別れとなるわけで……確かに長く生きるつもりだったようだし文句のつけようもないどころかそれでいいと思うけれど、ちょっとだけ寂しいと思ってしまった。

 

 ただハンスさんは前に見せてくれたオベリスクを通じての道具のやり取りを利用する形で、その後も情報交換や支援物資のやり取りを約束してくれた。

 これは物凄くありがたい話だ……仮に次のARKへ行ったとしてもオベリスクにさえたどり着けば、その時点では今以上に発展しているであろうここから素材から設備まで送って貰うことで一気に文明開化できるわけだ。

 そうして先のことまで含めて互いの目的を話し合うことで今後の行動がお互いのためになるよう方針を定めるつもりだったのだが、そんな俺とハンスさんのやり取りを聞いていたソフィアとキャシーは感心した風でありながら、少しだけ居心地悪そうにしていた。

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