百八十一頁目
怯えた様子で毛布に包まりながら震えていた少女……フローラはてっきり恐竜が入ってきてしまったと思っていたようだ。
だから俺が人間だと分かるとはっきりと目を丸くして、感激した様子で抱き着いてきた……自分の格好も忘れてだ。
元々余り異性と縁がある人間じゃなかったこともあり、またフローラはそれなりに整った見た目をしていたものだからそりゃあもう落ち着くまでが大変だった。
もちろん落ち着いたら落ち着いたでフローラは恥ずかしがってまた毛布をかぶってしまったけれど……仕方なく新しく布の服を作って差し出して着替えてもらったところでようやく情報の交換ができるようになった。
尤も彼女はまだこの島に来て一週間程度しかたっていないようだ……恐らく、俺が前にこの場所を飛び立った直後にやってきたのだろう。
やはり俺と同じ様に何も持っていない状態で海岸で目を覚まし、自らの格好を恥じ入っていたところで目の前を恐竜がのそのそと歩いて行って度肝を抜かれたそうだ。
俺がこの島に来たときと同じ経験をしていて少しおかしかったけれど、フローラは本当に心細かったようで語っている最中もずっと涙を浮かべていた。
そしてその後の話を聞くと、そこからは俺とはだいぶ違う行動をとっていたようだ。
というのもすぐに肉食のエリマキトカゲと出会ってしまい毒を吹き付けられて、目が見えない中で文字通り必死に逃げまどう羽目になったらしい。
そして近くの水辺で目を洗ったところで、今度はピラニアに襲われ慌てて飛び出したところを空からカモメに狙われてしまったという。
そんなこの島の洗礼のフルコースを受けた彼女は、もうとにかく安全な場所に避難することしか考えられず海岸沿いを走り続けたところで俺の拠点を見つけた。
どう見ても人間が作ったであろう人工物に安堵しつつも、近くに侍るスピノに怯えて……だけどスピノは近くにいる草食……ガメラたちを襲っていなかったことと後ろから新たなエリマキトカゲが迫っていて彼女は一か八かにかけて俺の拠点に飛び込んだそうだ。
その後はもう外に出る勇気もなく、ひたすらに毛布に包まって怯えながら時に俺がペットに持たせた果実を齧って過ごしていたらしい。
そこまで聞いてようやく俺はあんなにもラプトル達がウロウロしていた理由が分かった。
恐らくこの子も俺が絶望して山肌の拠点に引きこもっている間、ずっとここにいたのだろう……それでこの島は停滞させないためにあの恐竜たちをどんどんと放ち続けていたのだ。
もしも俺がもう少しあの場所で絶望して引きこもっていたらこの子は今頃……想像もしたくない。
【今回名前が出た動物】
ディロフォサウルス(エリマキトカゲ)
メガピラニア(ピラニア)
イクチオルニス(カモメ)
スピノサウルス
カルボネミス(ガメラ)
ユタラプトル