三百二頁目
例のゴーレムの攻撃のせいで防壁の一部こそ破損しているが住居自体は無事であった。
だから中で休むことはできそうだが、煌々と燃えている篝火と言い何とも言えぬ不気味さを感じてしまう。
しかしここ以上に着地するのによい場所がそうそう見つかるとは限らない。
別の拠点に行くにしてもアルケン達のスタミナを一度回復させておいた方が良いし、少しばかり悩んだが結局ここに降り立つことにした。
そうして改めて篝火を見てみれば誰かが追加したであろう木材が沢山詰め込まれているではないか。
まず思いついたのは仲間の誰かがここへ立ち寄った可能性についてだった。
しかしすぐに思い直す……仮に必要な何かを取りに来たとしても、ここではなく緑のオベリスクの麓に作った方に向かうはずだからだ。
何せここには殆ど物は残っていないし、それ以上に皆も危険なゴーレムが傍で暴れていたのを目の当たりにしているのだから。
つまりこれは……薄々想像出ていたけれど、また新しい人間がここにたどり着いてこの拠点を利用しているということなのではないか?
もしそうだとするならば果たして今回はどんな人間なのか、できれば今まであってきた皆の様に協力できるような人間であってほしいと祈りつつ万が一に備えてアルケン達を待機させ弓矢をしっかり握りしめながら拠点の扉を開いた。
そして中には……誰もいなかった。
何だか肩透かしを食らったような、それでいて同時に面倒なことにならずほっとしたような不思議な気分になった……が少ししたところでここに僅かにだが残してあったはずの素材や物資全てがきれいさっぱり消えている事実に気づいて愕然とした。
……いやそりゃあ誰か新しく逃げ込んできた人のために鍵はかけておかなかったけどさ……まさかこんな場所に泥棒が出るだなんてビックリだよもうっ!!
三百三頁目
空っぽになっている拠点にショックを受けた俺だが、すぐに先ほどあり得ないと切り捨てた仲間達による回収作業が行われた可能性を思い出す。
ただやっぱりこの拠点に大した物が残っていないと知っている皆がゴーレムに襲われるリスクを承知してまでここへ立ち寄るとはやはり思えない。
しかしそうなるとやっぱり泥棒が……などと頭を悩ませながら他にも何か変化がないかと周りを探してみると、前に別の犠牲者を埋葬した場所に違和感があった。
実際にそこへ行って確認してみれば墓石が何故か傾いているではないか。
一体何がどうしてとよくよく地面を観察してみれば土が掘り返されたような跡がある。
……防壁の隙間から入ってきた肉食が荒らした、にしては埋め直されているのはおかしい。
そしてお墓の意味を理解して埋葬し直すのも……そして荒らすのも人間の仕業だとすれば納得がいく。
つまりこれは多分誰かが墓荒らしを……住居に入った泥棒と同一人物かは分からないけれど、そういうことをする人間が来たのだろうか?
……もしそれが事実だとすれば倫理観もくそもない最低な野郎の仕業と思うべきか、埋葬しなおしているところからここの環境に追い詰められた挙句に藁をもつかむ心境で仕方なく行った哀れな人物と思うべきか。
今の時点で判断が付くわけがないが、俺の今の心境は最悪を通り越しそうだった。
……ああもう、こんな真似をする奴がいるだなんて信じたくない……だけど目の前の光景は間違いなく現実で……俺ってひょっとしなくても出会いに恵まれてる方だったのかな?
今回名前が出た動物
ロックエレメンタル(ゴーレム)
アルゲンダヴィス(アルケン)