ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第571話

三百四頁目

 

 悉く気力を奪われるような事態に見舞われて、俺は移動する気も住居の中で休む気も起きなくなる。

 また仮にも防壁の一部は破れている上に近くにゴーレムが残っている可能性もあるため、周囲の監視を兼ねて住居の屋上でアルケン達とこのまま一夜を過ごすことにした。

 だけど今はなんだか凄く人恋しい……だから何となく右手首の鉱石を眺めて浮かび上がるフローラのホログラムと長々と見つめ合った。

 

 彼女はまるで俺を励ますように手を伸ばして額を撫でようとしてくれるけれど、彼女の手は俺の身体に触れることなく通過してしまう。

 ……でもありがとうフローラ、お陰で元気が出てくる気がするよ。

 このままフローラと一緒の時間を過ごしていれば朝には再びやる気が戻ってきそう……と思ったのに、そこへまた俺の威勢を削ごうとばかりに人の悲鳴が聞こえて来てしまう。

 

 ……そうだよなぁ、最初の拠点だし新しく来たばかりの人間が襲われる声が聞こえてくるよなぁ……ああもう、畜生っ!! 手を伸ばせば助けられるかもしれない人がいるっていうのに腐ってなんかいられるかっ!!

 

三百五頁目

 

 前に作ってからずっと持ち歩いていた照明銃を撃ち放ち、周囲を照らしまくってみるとチラリと視界の隅に動物に追われる人影のようなものが見えた。

 あれが悲鳴の主だろうか? まだ動いている辺り助けに行けば間に合うかもしれないと、早速アルケンに乗って急いでそこを目指す。

 しかしあと少しというところで急にその付近を砂嵐が襲い視界が見通せなくなってしまう。

 

 ……クソ、何だって急に天候が変わって……でもおかしい、ミッキーは全く反応していないぞ?

 それにあの砂煙っぽい現象、よく見たら地表の一部でだけ起こっているじゃないか。

 あれは何なのか確認するためもう一度照明弾を打ち上げて光源を確保した上で望遠鏡で確認してみるが、どうも砂ではなく煙のようであった。

 

 ……そういえばあんな感じに煙が噴き出す道具が某有名な恐竜映画に出てたような……あれは確かスモークグレネードか何かだったはずだが、そんなものを作った人間があそこにいるということなのか?

 

三百六頁目

 

 物凄く気になる現象だったが、結局煙が去った後には人は残っていなかった。

 ただその場には少しだけ血痕とミッキーの同種と思わしき草食の死体が残っていて、また同時に襲撃者であろう体毛を赤く染めた狼の群れがその死体に食らいついている。

 どうやら襲われていた人はあの煙を利用してこのミッキーの同種に肉食のターゲットを擦り付けて何とか逃げ切ったようだ。

 

 ……空に照明弾を打ち上げて周囲を明るくしつつここに俺がいることをアピールしていたというのに、こちらに向かって逃げるどころか離れ去っていった人に思うところはあるが向こうから出てくる気がない以上この暗闇の中を探しても相手を見つけることは不可能だろう。

 だから俺にできることはせめてこれ以上犠牲者が出ないよう、この害悪狼共を駆逐しておくことだけだ。

 果たしてアルケン三頭に空から襲われては狼ごときで敵うはずもなく、あっさりと狼共はくたばった。

 

 後は素材を回収して戻るだけ……なのだが、近くにある血痕からこいつらも人の身体の一部でも捕食している可能性があると思うとその素材を採取するのが躊躇われた。

 ……それにこのまま残しておけば他の生存者が見つけた際に素材や食料として利用できるかもしれないし、俺としては今すぐこいつの素材で必要になる物もない。

 そう思って俺はあえてこいつらの死体をそのままにして再び拠点へと戻ることにするのだった。




今回名前が出た動物

ロックエレメンタル(ゴーレム)
アルゲンダヴィス(アルケン達)
トビネズミ(ミッキー)
ダイアウルフ(狼)
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