三百七頁目
人が襲われている陰惨な現場、荒らされた住居とお墓、見つけられなかった悲鳴の主と謎のスモーク……短い間に余りにも多くの出来事が目白押しだったせいか、何やら不思議な感情で頭がグルグルしている。
そんな中で何気なく左手首の鉱石を眺めながらスモークについて考えてみたところ、スモークグレネードの作り方を思いつくことができた。
ただ作るのに必要な素材はインゴットと木炭に始まり木材と皮に火打石に繊維に藁に発火粉、と一つ一つの要求量こそ少ないが様々な物資が必要であり、目覚めたばかりの人間が作れるような代物ではなかった。
だけど同時にこれらは発火粉を除けば原始的な生活を送っているだけで集まる素材であり、発火粉に関してもすり鉢さえあればすぐに作れてしまう程度のものだ。
……だからこそその全てが僅かずつではあるが多分この最初の拠点にも回収しきれずに残ってあったはずだ。
勝手にその二つを関連付けても仕方がないが、もし関係しているとすればあのスモークを放った主とはここの拠点を荒らした張本人なのではないか?
もしそうだとしたら照明銃を打ち上げた俺から逃げたのも泥棒を咎められないためだと考えれば……いや止めよう、どうせいくら考えても答えが出るわけないのだから。
それこそ先ほどのスモークグレネードを使った人間に出会うまでは…………
三百八頁目
精神的にはともかく肉体的には何事もなく無事に朝を迎えることができた。
……そして拠点から少し離れたところにある岩場に擬態したゴーレムが鎮座しているのを見て、一刻も早くここを立ち去ろうとアルケンで飛び上がる俺。
このまま皆の居る拠点に行って少しでも良いからちゃんと休んで体力と精神力両方を回復させたい。
そう思って移動を開始したが、その際に視界の隅に今度は白く光るカプセルが下りてきているのを見かけた。
ここからあまり遠くはないが帰り道が向かって右側だとすれば、あのカプセルは左側……正反対ということになる。
とは言ってもアルケンで移動するのならば時間的には大した差にならないだろうけれど、今はとにかく早く帰って休みたかった。
疲労から余計なミスを起こしても怖いし、あれが一番良い物が出る赤ならばともかく逆に一番粗末な物しか出てこない白色をわざわざ回収に行く気にはなれない。
だから今回は見送ることにして、そのままカプセルに背を向けて移動し続けるのだった。
えっ? 何でもうカプセルの光が消滅しているんだ?
ついさっき落ちてきたばかりだし地面に付いた後もカプセルはしばらくの間その場に残り続けて回収する人間を待ち続けるはずなのに……
いや答えなんか一つしかないじゃないか……誰かが回収したんだ……そしてその回収した相手の正体は多分きっと恐らく…………
今回名前が出た動物
ロックエレメンタル(ゴーレム)
アルゲンダヴィス(アルケン)