三百九頁目
色々思うところはあるが、取りあえず拠点まで戻ったところすぐに見張り台の上に居たソフィアが気づいて笑顔で手を振ってくれた。
そして他の二人にも知らせようとばかりに軽く太鼓を叩いて見せると、途端に小走りでハンスさんとキャシーも顔を覗かせてきた。
誰も彼も少し安どした様子をにじませているところを見ると、どうやら心配させてしまったようだ。
……心を削られる出来事が目白押しだった後にこの暖かい対応を目の当たりにしたせいか、ちょっと涙が出そうなぐらい嬉しくなってしまう。
その気持ちが顔に出てしまったのか、着地したところで駆け寄ってきた皆が口々にこちらを気遣う言葉を口にしてくる。
しかし何があったか説明しても無駄に皆を曇らせるだけ……だから俺はあえてちょっと疲れただけだとお茶を濁し、それでも何か言おうとする皆にお土産を渡して強引にごまかすことにする。
まずソフィアとハンスさんにお願いされた先達者様の日記とエレメントダストを渡し、次いでカプセルから回収した荷物を改めて取り出しにかかる。
果たして目的の品を渡されたソフィアとハンスさんを見ていたキャシーは期待感が高まっているのか、荷物を漁る俺を見る目がものすごぉくキラキラ輝いている。
……あの時、暗がりに浮かび上がったシルエットは確かに銃だったと思うけれどこんなに期待されるとちょっと不安で胸がドキドキしてしまう……お願いだから銃でありますように。
三百十頁目
願いが通じたのかやはりあの時回収したのは銃……それもキャシーの時代にもありそうなリボルバー式の奴であった。
果たしてキャシーはコレコレとばかりに受け取ると、すぐに布の服を作る生地を利用して腰へぶら下げるためのホルスターのようなものを作り始める……ようにソフィアへお願いし始めた。
どうやら細かい裁縫などはキャシーよりソフィアが得意なようだ。
まあインプラントを見て思いつける物ではない改良品を作るとなれば苦手な人間には難しいだろう。
しかし既に日記の内容に意識が向いているソフィアは生返事を返すばかりで、日記から目を離そうともしなかった。
……そういえば俺もまだ中をちゃんと読んではいないけれど、ひょっとしたらここまで夢中になるほど貴重なことが書かれていたのかもしれない。
そう思って俺も……いや同じ考えに至ったらしいハンスさんやキャシー共々、後ろから覗き見るような形で日記を読み始めた。
……前に日記を書いた先達者様は自分達がどう生きているのかに加えて、様々な成果について記してくれていた。
ロックウェル氏ならこの島のテクノロジーを含めた発明について詳しく語り、ヘレナ氏はここの絶滅動物の生態などについての情報を書き連ねていた。
またあまり多くは知らないがメイ・リンは動物部隊、ガイウス氏は人間部隊の組織経営をどうやっていたかを書いてくれていたと思う。
それらの情報は大なり小なり俺が生き残る上で役立ってくれたから今回もきっと……と内心期待していた。
しかし今回のダケイヤ氏の日記からわかることは、彼らが居た頃はこの砂漠に全ての出来事を鉛玉で解決したがる粗暴そうな人間が多くいたことと彼がそういう奴らを取りまとめていた人間であるということだけだった。
……思い返してみれば前の島で読んだ日記にも当時は幾つもの部族が争うような事態が多かったと書いてあった気がする……そう考えると協力できる人間ばかりと出会ってる俺って、やっぱり運がいい方だったのかもしれない。