百八十二頁目
一通り話し終えたところで少女はまた少し落ち着いたのか、俺に様々なことを訪ねてきた。
この島が何なのか、どうして自分たちがここにいるのか、外にいるスピノ達をどうやって飼い慣らしたのか……。
しかし一体どこまで説明したものか……この島は絶滅動物の保護区で俺たちもまた人工的に作り出された保護される側の存在である可能性が高いなどと告げてよいものだろうか。
この島でサバイバルを続けてそこそこ逞しくなったはずの俺ですらその事実を知った時は絶望してしまったのだ。
ましてさっきまで震えていた、それも恐らく未成年であろう少女がそんな事実に耐えられるだろうか。
悩みながら俺は改めて少女を観察して……いくつかのことに気づいてしまう。
それは左手には俺と同じ様にひし形の鉱石が埋め込まれていることと……俺とは違い彼女は金髪で白い肌をしている外人で、違う言葉を離しているのに当たり前のように会話が成立しているということだ。
これもやはり左手の鉱石……というより俺たちを作り出した創造主がコミュニケーションを円滑するために何か操作でもしたのだろうか。
しかしこれでは彼女だってすぐにでも違和感に気づいて、この状況への疑心と不気味さを抱いてしまうだろう……それが俺への不信感へと繋がらないうちに全て話しておこう。
百八十三頁目
自分が人工的に作り出された生き物だと知った彼女は最初こそ笑い飛ばしていたが、実際に口の動きと発音が違っていることとそれでも会話が通じていることを伝えると露骨に驚いた様子を見せた。
それでもなお疑いの目が消えない彼女を今すぐ無理やり納得させるまでもないと思い、あくまで仮説だと言い含めた上で記憶の隅にでも入れておくよう頼んでおいた。
その上で改めて俺は今後の方針について軽く話し合うことにした。
しかし同じ場所に居たら危険で、これ以上ここに居たら間違いなく次かその次の襲撃でスピノごと殺されてしまうとはっきり告げると彼女はまたしても毛布に包まって泣き出してしまった。
その後は何を話しても一切反応しないで、ひたすらに嗚咽を洩らす少女……恐らく先の襲撃の際に家の中にいた彼女はラプトル達の襲い来る物音を敏感に感じて……必要以上に怯えてしまっているのだろう。
できれば今すぐにでも移動したいのだけれど、せっかく出会えた人間の協力者を見捨てたくはない……俺は諦めて建物と壁の修復に取り掛かるしかなかった。
……もしも明日、あれ以上の規模でラプトル軍団が攻めてきたら……スピノと亀二匹だけで勝てるだろうか?
尤も俺はいつ死んでも……いや、やっぱりあの子を置いて死にたくはない。
【今回名前が出た動物】
スピノサウルス
ユタラプトル
カルボネミス(亀)