三百二十九頁目
日が完全に暮れるまでの時間で牧場の動物と畑の植物のお世話をしておくというキャシーと別れた俺はパララ君の背中で作業しているハンスさんの元へと向かう。
どうやら原油も前にTEK生物から回収した分でギリギリ足りていたようで、そこには既に完成している旋盤が配置されていた。
そしてハンスさんはその前に立って何か作業をしているようであり、近づいた俺の耳に聞きなれた駆動音が届いてくる。
この音を聞くと文明がまた一歩前進したという実感がわいてきて少し興奮してしまう。
ハンスさんも同じ心境なのか、俺が近づいたことにも気づかないほど一心不乱に色々と作り続けている。
驚かせて機器に巻き込まれないようタイミングを見計らって声を掛けると、すぐにこちらへ振り返るとご機嫌な様子で作ったものを早口で説明し始めた。
まず最初に見せてくれたのは、原油と同じくTEK生物から回収した電子基板を利用してくみ上げた発電機であった。
……旋盤までは長かった気がするけど、そうかもう電気を使えるところまで来たんだなぁ。
尤も完成しているとはいえガソリンが心許ないためにまだ一度も使っていないようであったが、俺達が回収してきた原油のお陰で事実上ガソリン不足も解決したと言っていいだろう。
だから後は動かす電化製品さえできていればすぐにでも運用できる……と思ったのだが、次にハンスさんが見せてくれた制作物は電化製品ではなく人数分の無線機であった。
どうも前々から非常時の連絡手段が欲しいと考えていたらしく、また先日俺が丸一日帰ってこなかった際に女性陣が不安そうにしていたこともあって、皆の安全のためにもすぐにでも使えるよう作っておいたそうだ。
確かにこれさえあれば遠距離間でも交信できるからお互いの情報交換は当然として安否確認だって迅速にできるようになる。
そう考えると確かに他の設備より優先して作っておいて正解なのかもしれないなぁ。
発電機を見た時点で反射的に電化製品を欲しがってしまった俺よりハンスさんの方がずっと正しい判断ができている気が……え? 単に冷蔵庫とかエアコンを作ろうとしたけど材料が足りなかっただけ?
……感心して損したような気分だ……しかしそうか、そういえばまだポリマーは手に入っていなかったっけなぁ。
もちろん黒曜石とセメントを利用すれば作れるけれどそのセメントを効率的に生産できる科学作業台も無ければ虫から直接採取できるカエルもない俺達は数を揃えるのが中々に厳しいものがある。
実際に前の島にいた俺達は最初の内は有機ポリマーで代用していたものだが……しかし流石にこの砂漠には歩く有機ポリマーもといペンギンちゃんはいないよなぁ?
今回名前が出た動物
パラケラテリウム(パララ君)
ベールゼブフォ(カエル)
カイルクペンギン(歩く有機ポリマー)