三百三十頁目
皆で夕食を食べた後でいつも通りルゥちゃんの踊りを見守る俺達だが、その際に女性陣に無線機について説明する俺とハンスさん。
もちろん二人とも電話が無い時代出身だけあって離れたところにいる相手と会話できる機械の存在に驚いていた。
尤もソフィアの方は何かの本で糸電話のようなものを知っていたらしく、すぐに受け入れたかと思うとその仕組みの方に興味を示していた。
それに対してキャシーの方は実際に使ってみても無線機を通して聞こえる自分の声に違和感を覚えてしまい何度も首をかしげている。
しかしすぐに自分が発した内容はしっかりもう一つの無線機に届いているのを理解すると、今度は二人して玩具の様に弄り始めてしまう。
松明を片手に拠点の端と端に別れたかと思うと無線機を通して手に持った松明を上げたり下げたりする指示を出してキャッキャッと楽しそうに騒いでいる。
更には踊り終わったルゥちゃんも巻き込んで飽きることなく遊んでいる姿を見て無線機を作ったハンスさんも何やら嬉しそうな様子だ。
……みんな、最初に出会った時は色々トラブル続きだったけれど凄く良いトライブになってきたなぁ。
前の島で結成したトライブにも風通しのよさでは負けていない気がするし、この空気を保ったままもっと多くの仲間を増やすことが出来たら一番なんだけどなぁ……
三百三十一頁目
和気藹々とした時間はあっという間に過ぎていったが、明日の活動に支障をきたさないためある程度したところでそれぞれ寝室へと戻ることにした。
俺も自分のベッドに潜り込んで目を閉じるが、少しの間トライブのことと……例のスモークグレネードを使っていた人のことを思い出す。
……何だかんだでここに来てから俺が出会ってきた人は癖はあれど良い人殆どいい人ばかりだった。
もしかしたらあの人も良い人で、拠点が荒らされているように見えたのは俺の勘違いだったのではないか?
皆で過ごす時間が余りにも心地良過ぎたからか、今更ながらにそんな思いが湧き上がってくる。
しかし何度も確認したのだからあのお墓は荒らされていたのは間違いのない事実のはずで、そう考えるとすぐにでも疑心が湧き上がってきそうになる。
疑うべきか信じるべきか……いやどちらにしてもこのまま悩み続けて思考する時間を無駄に使うのも勿体ない。
……よし、決めた……明日は皆より早く起きてあそこを本格的に調べて回ろう。
それで仲間が増えればまた作業効率は上がるのだから、それこそ例の人でなくても別の生存者で協力できそうな人に会えれば万々歳なのだから。