百八十四頁目
三重に建物を囲っていた防壁をさらにもう一周増やしつつ、そこに一カ所だけ出入り可能な入り口をあえて作っておいた。
恐らく敵はここから襲ってくるだろうが、この狭さなら一度に殴り掛かれる数は固定される。
そこをスピノで迎撃していけば通常のラプトルならば何とでも対処できるだろう……あのデカいのを除けばだが。
最も懸念材料はまだある、ラプトルだけならばともかく一緒にスピノが襲ってきたら……もしそれがあの個体と同じ様な赤いオーラを身に纏っているように見える奴だったらもうお終いだ。
しかしだからと言って未だに毛布に包まって動けないでいる彼女を放っては……と思ったら、何やら入り口から顔を出してキョロキョロ周りを見回している。
そして近くにある焚火……俺が作業中についでのように焼いておいた霜降り肉を見つけるとフラフラと近づいてきて、再度周りを見回してようやく俺に気づくと恥ずかしそうに顔を火照らせて俯いた。
どうやら泣きつかれてお腹が減ったらしい……ましてこの島に来てから果実しか食べていないのではこの油の滴る音と匂いは耐えられないだろう。
苦笑しながら近づいてそのうちの一つを渡して、ちょっと不安そうに俺を見つめる彼女の前で別の奴を食べて見せるとようやく安心したように口をつけ始めた。
そうやって夢中で食事をしている姿はちょっとはしたないけれど、ようやく笑顔が戻った彼女の姿は年相応に可愛く見えた……十個以上平らげるまではだが。
空腹のあまりよほど美味しかったようだが、それだけ食べてなお不満そうにこちらをじっと見つめる彼女に再度苦笑しながら、俺は新しい肉を焼いては食べさせることを繰り返すのだった。
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食べさせるだけ食べさせて、ついでに持ち歩いて定期的に補充していた革袋の水筒から水を飲ませたところでようやくこの少女は満足したようだ。
すると何やら妙に俺へ懐いてしまったようで後ろをついて回るようになった……まるで他の動物のようにテイムしてしまったような気分だ。
尤もそれでも少しでも防壁の外へ出ようとすると必死に引っ張って止めるので、やっぱり何処かへ移動するのは難しそうだ。
せめて近場にいる動物を少しでも戦力代わりに仲間にしたり、山肌の住居から鉄資源を持ってきてこの子にも着せてあげたかったのだけれど、こうなっては仕方がない。
代わりに何か武器になりそうなものを作ろうと建物の中にある資材を確認したけれど、殆ど建物の修繕に使ってしまったから殆ど何も残っていなかった。
何せ最初の出発の時に目ぼしい物は持ち出しているし、二度目に戻ってきた際もスピノを捕まえるために最低限の素材しか集めていなかったのだから当然だ。
これはちょっと……いやかなり不味いかもしれない。
【今回名前が出た動物】
スピノサウルス
ユタラプトル
αラプトル(赤いオーラを身に纏ってるラプトル)
人間(フローラ)