ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第591話

三百四十六頁目

 

 少しばかり悩んでいた俺にソフィアは、早く追わないと危険な動物に襲われるかもしれないと急かしてくる。

 ……そう言われて今更ながらにこの砂漠には危険な生き物が沢山居ることを思い出す。

 確かに危惧すべきことは多いけれど、だからと言って人に手を差し伸べるのまで躊躇してどうするのか。

 

 どうやら俺は不安の余り、一番大事なことを見失いかけていたようだ。

 実際にはあの人はこの環境に適応できているかもしれないが、それでもちょっとしたことから命を落としかねないのがARKだ。

 もちろん俺達だって同じだが、だからこそ手を取り合い協力しあうことが大事なんじゃないか。

 

 それこそ向こうが警戒して協力するのに後ろ向きであっても、襲撃システムや厄介な動物などの情報を教えるだけで生存率は大きく変わるはずだ。

 ……そうだとも、いくら不安だからって他の誰かを見捨てる様な真似はしたくない……色々思うところはあれど、その気持ちだけは真実なのだから。

 だから俺はソフィアの言葉に頷くと、早速あの人影を完全に見失わないうちに彼女と共に後を追いかけることにするのだった。

 

 

三百四十七頁目

 

 人影のあった場所へ向かいながら、道中で俺はソフィアに一応前の拠点での出来事を話しておくことにした。

 こうなった以上、情報を共有して最低限の警戒心は持っておいてもらいたかったからだ。

 果たして話を聞いた彼女は少しだけ驚いた様子を見せたが、すぐに納得した様子で頷いて見せた。

 

 どうもソフィアは……いや他の皆もだが、昨日の早朝に拠点へ戻ってきた俺の態度に何かあったのではと思っていたらしい。

 ただ自分から話しださないところを見て、何か考えがあるのだろうとあえて気にしない風を装ってくれていたそうだ。

 ……なんか気を使っているつもりが逆に気を使われていたようで申し訳なくなってくる。

 

 果たして話を聞いたソフィアは俺が黙っていた理由も察してくれたようで、警戒したくなる気持ちはわかりますと言ってくる。

 しかし同時に彼女は、それでも私は誰かを疑うより信じたいと……こちらをまっすぐ見つめながら呟いた。

 ……疑うより信じたいか……凄く良い言葉だし、それを口にできる彼女の精神も……凄いと思った。

 

 そんな気持ちを素直に伝えるとソフィアは恥ずかしそうに真っ赤に火照らせた顔をアルケンに押し当てながら、これは全部キャシーからの受け売りですからと答えた。

 彼女曰く、前に俺達と邂逅した際……正確にはその夜にルゥちゃんの一言から少しだけお互いの関係がギクシャクしてた時に聞いたらしい。

 二人だけになった後でこの後どうしていくか話し合った際にキャシーが、未来云々の話は余りに突拍子もないけれど、それでも自分は誰かを疑うより信じたいから俺やハンスさんのことを信じてみないかと言ってくれたのだそうだ。

 

 ……そうか、それで彼女達は俺達を信頼してくれるようになったのか……言い出しっぺのキャシーも、言われて行動を共にしてくれたソフィアも……何かあるたびグジグジ悩んでしまう俺よりずっと立派じゃないか……見習いたいところだ。

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