ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第592話

三百四十八頁目

 

 空を行くアルケンなら一気に追いつける、と思ったのだが予想以上にこれが難しかった。

 相手は物陰に隠れるようにして移動しているらしく、空の上から見下ろしても中々その姿を捉えることができなかった。

 恐らく俺一人なら巻かれていただろう……が、ここでもソフィアの観察力が生きてきた。

 

 彼女は地面に残っている相手の痕跡……どうも足跡などは付かないようにしているようだが、微かな違和感から相手が進んだであろう方向を察してくれるのだ。

 お陰で姿こそ捕えることができないままであるが、痕跡からして確実に距離は縮まっている様子であった。

 ……本当に凄い……ひょっとして洞窟とかの探索も俺がやるよりソフィアに頼んだ方がずっと効率よくいくんじゃないか?

 

 そんなことを思いながら移動を続けていると、唐突にソフィアがあっと声を漏らしたかと思うと先の方を指さした。

 果たしてその先ではついに白日の下に姿を現した例の人影の主と思わしき存在と、それを後ろから追いかけてくる狼の姿があった。

 鼻の利く狼に嗅ぎつけられたことで流石に身を隠しながら移動する余裕がなくなったようだ。

 

 ……しかしここまでして俺達から逃げようとしているということは、やはり何かしら後ろめたい真似をしていて……なんて考えるのはあの狼を倒してからでいいだろう。

 まあ狼ぐらいなら問題なく倒せるだろうし、取りあえず戦闘慣れてしていないソフィアにはあの人の監視を続ける意味も兼ねて空で待機してもらっておいて俺一人で戦いに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 な、なんだ変な液体の入った壺を投げ……こ、この臭いは油なのかっ!?

 

三百四十九頁目

 

 クソ、完全に油断していたっ!!

 まさか油の詰まった壺を投げてきたかと思えば、次いで火矢まで放ってくるなんてっ!!

 咄嗟に空へと旋回できたから巻き込まれずに済んだが、もろに食らった狼たちはあっという間に火達磨となった。

 

 ……ソフィアには空で待機しておいてもらってよかった、彼女では咄嗟に旋回できずにあの中に巻き込まれていたかもしれない。

 一歩間違えれば大惨事になりかねなかった状況に思わず冷や汗が流れてくる。

 そんな俺の元にやってきたソフィアは心底心配そうに大丈夫でしたかと何度も何度も尋ねてくる。

 

 まあ目の前でいきなり火炎が上がれば取り乱すのも無理はない……まして下を見れば炎に巻かれた狼が丸焦げとなり力なく地面に崩れ落ちてく無残な姿があるのだから、余計に心配になるだろう。

 俺も一瞬だけかつて戦ったドラゴンの炎に飲まれかけた時のことを思い出し身震いしそうになるが、逆にその経験があったお陰かすぐに正気を取り戻すことができた。

 ……しかし手遅れだったようで、俺が顔を上げて周りを見回した時には先ほどの人はどこかへ雲隠れしてしまっていた。

 

 少し遅れて正気に戻ったソフィアと一緒に改めて周囲を探すが、その頃には風のせいか或いは炎が渦巻いた勢いのせいか痕跡も分からないほど消えてしまっていた。

 これではもうどうしようもない……俺が心配の余り自分の役目を忘れてしまったと落ち込むソフィアを慰めながら、この場は拠点へと引き返すことにするのだった。

 ……ただ頭の中で俺は例の人が何を考えてあの炎を放ったか、それだけを考えていた。

 

 狙い的に狼が目標であったのは間違いないだろうけれど、果たしてそこに俺達を巻き込むつもりがあったのかどうか……たまたま割って入ろうとした俺とタイミングが合ってしまっただけの可能性もあるのだが……?




今回名前が出た動物

アルゲンダヴィス(アルケン)
ダイアウルフ(狼)
ドラゴン
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