ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第593話

三百五十頁目

 

 結局もうこれ以上どうしようもなく、俺達は改めて拠点へと引き返し始める。

 先ほどの出来事が衝撃的だったせいか、お互い何を言うでもなく黙り込んでしまい少し重苦しい空気が漂っていた。

 しかしそこで唐突に腰に下げていた無線機からキャシーの声が聞こえてきた。

 

 どうやら帰りが遅い俺達のことを心配している……ようではあったが、口ぶりからどうも自分と同じように道に迷っていると思ったらしい。

 だから聞いてくるのは後どれぐらいかかりそうかとか、目印になるよう照明銃でも使いましょうかとかそういう内容ばかりであった。

 まあこうして通信が取れている時点で致命的な状況でないのはほぼ確実なのだから当然だが、何というかそのズレているというか能天気っぽい言い方というか……そんな口調のキャシーの声を聴いて俺とソフィアは自然と笑みを零していた。

 

 あんな殺伐としたやり取りの後なだけに、いつも通りのキャシーの態度は逆に癒しにすら感じられるのだった。

 ……やっぱり仲間がいるって作業効率の面だけじゃなくて精神的にも凄く助かるよなぁ……さっきの人は一人で活動しているように見えたけれど、仲間がいることの良さを知っているのだろうか?

 

三百五十一頁目

 

 やはりソフィアは細かい拠点の位置も完璧に把握できているようで、特に照明銃などの目印が無くてもあっさりと帰り着くことができた。

 すると見張り台……ではなくパララ君の背中にハンスさんとキャシー、それにカンガに乗ったルゥちゃんまで揃って何かしているではないか。

 気になって近づいてみると聞き覚えのある文明の音が二種類も聞こえてくるではないか。

 

 一つはもちろん旋盤の駆動音だが、もう一つの方もすぐにわかる……文明開化の第一歩、発電機が稼働している音だ。

 果たして俺達もパララ君の背中に降り立ってみれば、キャシー達の身体の陰に隠れるように設置されていた発電機とその傍にこれまた文明社会でよく見た冷蔵庫が置かれていた。

 そして三人はその手に持ったカスタムジュースやサボテンスープを飲んでは、心底幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

 ……この砂漠の熱気の中でキンキンに冷えたドリンクを飲むとか、そんなの美味しいに決まってるじゃないかっ!!

 思わずアルケンから飛び降りる勢いでパララ君の背中に降り立つとこちらに気づいたハンスさんがちょうど良いところにと言いながら冷蔵庫から飲み物を取り出してくれる。

 そのうちの一つを受け取って早速飲んでみるが野外活動で汗をかいた身体に冷えた液体はまさに染み入るようであった。

 

 遅れてやってきたソフィアもまた冷蔵庫の存在を知らないだけに首をひねっていたが、こちらは感激した様子のキャシーに勧められるまま飲み物を飲んで……一瞬その冷たさに驚いた顔をしたがすぐに美味しそうにゴクゴク喉を鳴らして飲み干していく。

 ああ、やっぱりちゃんと冷えている飲み物は良いなぁ……水分が補給できるだけじゃなくて、こういう美味しさの追求も生きる活力につながる大事な要素だって良く分かるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記

 

 この時は熱い砂漠で冷たい飲み物を頂く感激に気を取られ過ぎていた。

 それこそ頭の中では椅子とかを完備した日光浴ができる場所を作り、南国のパラダイス的な気持ちを味わうのもいいか……なんて馬鹿な事ばかり考えていた。

 だから気づけなかったんだ……稼働する発電機がほんの僅かにだけれど異音を発していることに……




今回名前が出た動物

プロコプトドン(カンガちゃん)
パラケラテリウム(パララ君)
アルゲンダヴィス(アルケン)
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