三百六十六頁目
降りてきた緑のカプセルの近くで身を潜めてどれだけ経ったか、ついにソフィアと一緒に確認した人影の主と思わしき相手と接触することができた。
尤もこちらが姿を現すと向こうはすぐに距離を取ってしまい、追いかけようとしたところでパチンコでメッセージを張り付けた石を飛ばしてきた。
その内容から彼がモーリツという名であり、こちらを警戒していることが分かった。
まあARKにおいて臆病なぐらい慎重なのはむしろ良いことだし、こちらも気にせず矢文という形でメッセージのやり取りをすることにした。
むろん万が一にも相手を汚させないよう矢尻を削ったものにメモ書きを括り付けて、モーリツさんの足元から少し離れたところへ打ち込む。
それを拾って読んだ向こうがまたメッセージを書いた紙を括り付けた石をパチンコでこちらに飛ばし……そういうことを繰り返し少しずつ情報を交換していく。
その際に向こうの様子を軽く確認するが、余り緊張しているようには見えなかった。
むしろ一見すると穏やかそうな笑みすら浮かべており、書かれている文字や文体からも悪意のようなものは感じられない。
そんな彼に対する俺の印象は……胡散臭い、だった。
何故なら彼は確かに笑っているように見えるけれどその目だけは真剣そのものであり、こちらの動きを一挙手一投足見落とすまいと値踏みしているようであったからだ。
三百六十七頁目
冒険者だと名乗る彼だが雰囲気というか佇まいは、何故か初めて出会った時のオウ・ホウさんを思い起こさせる。
また身体つきも服の隙間から覗ける範囲でも引き締まっており、恐らく軍人上がりかそうでなくても荒事に慣れているように思われた。
同時に彼の装備が前は全身砂漠装備だと思われたが、よくよく見れば頭の部分だけは布で作られたものであることに気が付いた。
しかしそれ以上のことは見た目からではわからない……観察力のあるソフィアならば或いはもっと何かを掴めたかもしれないと、今更ながらに彼女と一緒の時に接触できなかったことが悔やまれた。
もちろん文章でやり取りした内容の正確さについても俺には分からないが、取りあえずは信じるしかないだろう。
そんな彼曰く、ここに来たのはちょうど俺がソフィアやキャシーと合流した後だったらしい。
砂漠のど真ん中で目を覚ました彼はいきなりの出来事に度肝を抜かれたが、元々冒険者として未知の大陸でサバイバルするのには慣れていたため巨大な動物や灼熱の太陽、それに身も凍る様な夜の寒さなどの過酷な出来事が何度襲ってこようとも冷静に対処することができたという。
まず飛んでくる腹の膨らんだ虫から水を得て、次いでその虫を辿ることで地面から水が湧き出ている場所を見つけると、更なる目標として近場に降りてくる謎の光に目をつけた。
そうして救難物資が入っているカプセルの存在を知った彼は、とにかく物資を集めるのが先決とばかりにこうしてカプセルを回収して回っていたらしい。
その中で俺が初めて作った拠点なども見つけたらしく、聞いてみればやはり彼が中の物資を漁ったらしい。
少しでも生き残れる可能性を高めるため、また何か住居者の目印が無いか知りたかったからとのことで、本来ならそこに自分からもメッセージを残していくつもりだったそうだ。
しかしそのタイミングですぐ傍で岩に擬態していたゴーレムが何かのきっかけで目を覚ましたらしく、このままここに居たら命が危ないと逃げ出してそれっきり近づかないようにしたという。
また場所が場所なだけに住居の持ち主はあのゴーレムを門番代わりに使っていたのではないかと思い、同時にあの人どころかその辺の獣ですら簡単にミンチにできる凶悪なゴーレムをあんな場所に残しておく奴は危険な存在ではと警戒するようになったという。
そのせいでアルケンに乗っていた俺……つまり動物を操れる人には近づかない方がいいだろうとしていたと彼は伝えてきた。
……確かにゴーレムの位置関係からして門番代わりに使役してると誤解されても仕方ないか。
今回名前が出た動物
ロックエレメンタル(ゴーレム)
アルゲンダヴィス(アルケン)