ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第601話

三百六十八頁目

 

 彼は自分の事情を伝えながらもこちらに幾つか質問してきた。

 それらに返答する形で俺もまた自分達の事情を簡単に説明していく。

 俺自身の名前に始まり、この砂漠へやってきた時期と、これまでどうやって過ごしてきたかについて。

 

 そして今は仲間と共に行動していることも伝えたが、聞かれなかったこともありあえて仲間達の名前を始めとした詳細は教えなかった。

 彼の話が事実ならば墓を荒らしてはいないことになるし、こちらを避けるような動きをしていたのも安全のためであり、何か目論んでの行動ではないはずだ。

 それでも向こうの気を許しているように見えて隙を見せない立ち振る舞いにどうしても警戒してしまうからだ。

 

 後は単純に当人の許可も取らず勝手に個人情報を話すのが悪い気がしたのもある。

 向こうはそんなこちらの思惑に気づいているのかどうか、特に態度を変えることはなかった。

 ただ左手首の鉱石を眺めると色んな物品の作り方が思いつくことは知らなかったようで、しきりに感心したような声を漏らしていた。

 

 どうも彼の装備は前に使っていたスモークグレネードも含めて、殆どがカプセルからかき集めた物らしい。

 だから俺の拠点から持ち出した物品についてもそのまま手付かずで荷物の中に仕舞われているという。

 そして今この場で返しますかとも言われ……尤もその際には地面に置いていくから後で回収してほしいとのことだったが、そこまで貴重な物はないのでそのまま持っておいてもらうことにした。

 

 何ならばその物品で実際にクラフトを試してみればどうかというが、それは後で俺と別れてから試してみるとのことだ。

 ……そう彼は今の時点では俺達と行動を共にするつもりはないようであった。

 別に俺の言葉を疑うわけではないがと前置きしつつも、冒険者として旅をする中で短絡的に行動して面倒なことになった経験もあるから一旦一人で色々と考えたいというのだ。

 

 彼の言う考えたいことの内容には多分、自分が何故こんな砂漠に攫われてきたのかや、その首謀者が俺ではないかという疑問も含まれていると思う。

 実際にメッセージのやり取りをする中でここがどういう場所かわかっていることを教えて欲しいと言われたが、俺は知ってこそいるけれど文字でやり取りできるような内容ではないとだけ返した。

 本当にこのARKという場所を始めとした情報は文字にしていたら凄まじい量になってしまうし、もっと言うと余りに突拍子もなく信じがたい内容でもある。

 

 それを信頼関係も築けていないこの状態で教えたらそれこそキャシー達の時の二の舞になりそうだ。

 だからせめて彼が……いや俺の方もお互い一緒に行動する気になれるまではその辺のことは話題にしない方がよさそうだと思ったからだ。

 向こうもまたそれ以上踏み込んでくることはなく、代わりとばかりに動物の飼育方法について尋ねてきた。

 

 これについては前にオウ・ホウさんと出会った時に思ったが、何かきっかけがあれば気づける程度のことを下手に隠して不信感を買っても仕方がない。

 そう思い返事を送ったところで、少し離れたところから狼の咆哮が聞こえてきた。

 すると彼はサッと別れのメッセージを書いて寄越すと、そのまま身を翻してその場を立ち去って行ってしまうのだった。




今回名前が出た動物

ダイアウルフ(狼)
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