三百九十六頁目
ミッキーが察知した天候によって鳴き声を変えるという仮説は正しかったようだ。
拠点に帰り着いたところで周囲が薄暗くなったかと思うと遠くからゴロゴロと雷が鳴り響く音が聞こえてきた。
しかしそれだけであり、砂嵐や猛烈な熱波は元より、俺達の居る辺りには雨が降ったりとかすら起こるわけでもなかった。
……というかちょっとアルケンに乗って高いところから観察してみたが、別に遠くの方でも雷が落ちたり雨が降ったりしている様子はない。
いったいこの天候は何なのか不思議で仕方がないが、これならモーリツさんの様子を確認しに行く必要はなさそうだ。
そう思いつつ再び拠点に降り立ったところ先に戻っていた女性陣の傍でハンスさんが大声を上げているではないか。
ついにできたっ!!とか、これで楽になるぞっ!!とか自慢げに叫んでいる彼の手には青く光る小さい球状の何かが握られているが……一体何ができたのだろうか?
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遅れて俺に気づいたハンスさんはこちらに駆け寄ってくると、ついに出来た出来たと叫びながらその丸い物体を押し付けてくる。
一体何事かと聞いてみるが久しぶりに話が通じないモードに入っており、一方的に思ったことを口走るばかりだった。
ただその際に聞こえてきた単語を組み合わせてみたところ、動物の運搬が楽になる装置とやらが完成したようであった。
……そういえば確か前に『繊維』『皮』『金属のインゴット』『原油』『ポリマー』『水晶』が必要となる何かを作りたいと言っていた気がする。
どうやら今まではポリマーの供給が不安定だったために作れないでいたようだが、代用品の有機ポリマーが手に入ったことでついに制作することができたようだ。
ハンスさんは完成したソレ……低温ポッドともクライオポッドとも聞こえるソレを実際に使って見せると、俺達全員を呼びよせた。
そして皆が見守る中で自信満々にそのポッドを近くにいたアルケンに押し付け………………そのまま固まってしまった。
遠くから聞こえる雷雲をBGMに良く分からないままハンスさんを見守り続けるが、唐突に彼は何がどうなっているのだと今度は怒りと困惑が入り混じった声で叫び始めた。
……何がどうなってるって言われても、それはこっちの台詞なんですが?
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どうもハンスさんが作ったポッドは上手く機能が働いていないようだ。
本当なら押し付けるだけでポットの中に動物が収まるという。
逆に出すときは投げるだけでいいらしいが……それってもしかしてポケモ……
い、いやまあ確かにそんな道具があれば物凄く便利になっただろうけれど、実際には使えていないのだから仕方がない。
これはインプラント経由ではなくハンスさんが知識を元に作り上げた物だからARKのシステムが使用に制限をかけているのかもしれない。
尤も一応ARK計画を知っているはずのハンスさんはそんなはずは、とかこんなはずでは、とかぶつぶつ呟いている。
……しかし前にもフローラとかが知識を元に染色料だとか色々作ってたと思うんだけどそっちは普通に使えたんだけどなぁ?
まあ他に原因なんか考えられないし、やっぱり便利すぎるから動物の洞窟内飛行が許されてないのと同じでARKシステムが邪魔しているんだろう。
とにかく遠くから聞こえる雷鳴も煩いし万が一にも雷が落ちてきたら不味いのでモンスターボー……ポッドの使用に執着しているハンスさんには悪いが引きずってでも屋内に退避させるとしよう。
今回名前が出た動物
トビネズミ(ミッキー)
アルゲンダヴィス(アルケン)
現在の天候
磁気嵐