ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第62話

百九十二頁目

 

 色々とやっていたせいでついに日が暮れてしまった。

 発火粉を利用して無数の篝火を焚いて光源を確保しながらも、家の中に引きこもり出来る作業を考える。

 手持ちの素材を作業机の上に並べて、特に余っている鉄のインゴットを眺めながらも退屈そうに家の中を飛び跳ねて壁を叩いたりしているフローラを見つめて……ふとこの金属で壁を作れないかと思った。

 

 石よりもずっと固いこの金属で壁を作れれば、流石のあの特殊個体でも壊すのは難しいだろう。

 だからいつも通り左手の鉱石を見つめて、淡い緑の光と共に作り方を思いついた俺は鉄同士を付着させるためのセメントを作り始めた。

 前に矢った通りすり鉢にキチンと石を詰めて摺り下ろして疑似的なセメントを作り、実際にインゴット同士をつなげると想像通りの強度の壁が完成した。

 

 尤も幾つも作れなかったから特に重要になりそうな部分にだけ張り替えるようにするつもりだが……もっと鉄を集めれば安全な拠点を作り上げられそうだ。

 そうなればこの少女も少しは安心して俺を送り出せるようになる気がするが……俺の作業を見ていて左手の鉱石に興味を持ったのか自分のを眺めたり叩いたりしている幼い少女の仕草に癒されながらそんなことを思った。

 

百九十三頁目

 

 もう少し色々と作業をしたかったのだけれど、フローラが眠気を訴え始めたので少し明かりを消してベッドに寝かせてあげた。

 しかしフローラは寂しくて怖いからと一緒に眠るよう提案してきて……色々伝えたけれど結局女の子の涙に勝てなかった俺は諦めて隣に横になる羽目になった。

 もちろん寝る前ということで鉄の鎧は脱いで布の服に着替えているから、少女が抱き枕代わりに抱き着いてくると色々な柔らかさが伝わってきて理性がヤバい。

 

 それでも正気を保てたのは……外に出れない少女は水浴びもろくにしていなくて、近くで見るとちょっと薄汚れて見えたためだ。

 尤も俺の方も似たようなものだろう、そしてこれだけお互いに汚れているということは多分匂いも……嗅覚がマヒしてるからあまり感じないけれど。

 もしも明日の襲撃を乗り切ったら水浴びできるところを作ったほうがいいかもしれない。

 

 ……そういう普通の、文明的な人間としての行動を今まで全く考えてこなかった自分に今更気付いて驚きを隠せない。

 かつて日常生活を送る上で習慣になっていたはずの行動をこうもあっさり抵抗もなく忘れていたなんて……やっぱり俺もこの少女もこの島で生き残るために生み出されてた存在なのではないだろうか?

 もしそうだとしたら、俺の前にこの少女が……異性が現れた理由は繁殖……馬鹿なことを考える前に眠ってしまおう。

 

 明日は多分、この島に来て以来の大戦になるのだから。




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