ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第636話

四百二十五頁目

 

 モーリツさんの言葉に衝撃を受ける。

 俺はまだ彼にはARKに関する情報は元より、ここに来る人が様々な時代から来ていることすら教えていなかったはずだ。

 それなのにどうしてそんな現実離れした信じがたい真実に自力で達した上で、俺が自分より未来から来た人間だと断言できたのか……訳が分からない。

 

 ただ困惑している俺を見てモーリツさんはやはりそうなのだね、と頷いて見せたところを見るとカマをかけた部分もあったようだ。

 しかし半ば推測とはいえどうやってその考えに至ったのか疑問に思うが、その答えは彼が自分から明かしてくれた。

 要するに俺に出会う前にも出会った後にも彼はここに来る生存者と顔を合わせており、それぞれの人間と軽く情報交換をしたことがあったようだ。

 

 当然その際に自己紹介もするわけで、自然と向こうがいつどこから来たという話にもなり、そこで時代のズレに気づいたようだ。

 最初は何かの間違いである方を疑っていたらしいが、そんな中で動く岩というありえない生物を見つけたことでここがあり得ないことの起こる場所だと認識を改めた。

 だから彼は本当にここへ来る人間が別の時代からやってきている可能性に目を向けて……出会ってきた中で一番この場所に適応している俺が何か知っているのではないかとカマを掛けてきたのだ。

 

 ……そうか確かに前の島とは違ってここにはゴーレムを始めとした非現実的な生物がいる。

 あれが実際に動くところを目の当たりにすれば現実離れした考えを受け入れやすくなっても不思議ではない。

 ただそれだけだと俺がどの時代から来たかについては判別できないと思うのだが……まあカマを掛ける意味で適当に言っただけかもしれないが、それにしても最初にあった時にでも普通に聞いてくれてば答えたのだが何故そうしなかったのだろうか?

 

 また何であの拠点の跡地を仲間を集めた上で観察していたのか……そんな疑問を素直に聞いてみるとモーリツさんはこれもまたあっさりと答えてくれるのだった。

 

四百二十六頁目

 

 モーリツさん曰く最初に会った時は純粋に警戒していた……その時にも軽く会話した通り、要するにあのゴーレムの関係者ひいてはここへ人々を攫っている黒幕の可能性を否定しきれなかったからあえて何も気づいていない風を装ったそうだ。

 尤も初対面時の会話の時点で俺の人の好さはわかっていたらしく、それこそ動物を仲間にする方法も正直に教えてくれたことなどからしても恐らく俺がお人好しの部類であるとは思ったようだ。

 それでも万が一のことを思い、俺が本当に自分を騙そうとしていないかを確認する意味も兼ねてあのゴーレムを監視していたらしい。

 

 何故なら俺が教えたやり方は動物を昏睡させた上で餌を与えなければいけないが、あのゴーレムには麻酔などは効果がないため仲間にできないはずの生き物のはずだ。

 だからこそ俺の作った拠点の傍に居るゴーレムを僕にしているかどうかである程度見極めれると思っていたらしい。

 同時に他の野生動物ならば人手が集まればどうとでも対処できるがあのゴーレムが暴れ出した場合はこの近辺にいる全員がお陀仏になる……だからこそ皆であいつだけは見張っておこうという名目で新しく来る人間と一緒に監視をしていたらしい。

 

 そうしているうちに再び現れた俺は実際にあのゴーレムと敵対していた……どころか簡単にとは言わないが当たり前のように打ち倒してしまった。

 その事実を目の当たりにした事でモーリツさんは俺を更に信頼がおける相手だと認識したようだが、面識のない奴らは逆に圧倒的な戦力差もあって怯えてしまい……ああして近づいてくるなり一目散に逃げだしてしまった。

 ……あくまでもゴーレムに襲われないために手を組んだだけの仲、なだけに仲間意識が薄かったというのはわかってきた。

 

 しかしこうなると驚かす形になってしまった逃げた人達に申し訳ない気がして、ちゃんと会って話をしておきたいと思ってしまう。

 果たしてそんな俺の心情が顔に現れていたのか、モーリツさんは苦笑しながら言葉を続けた。

 俺の他者を気遣えっての立ち振る舞いは優しさの表れでもあるのだろうが、同時にそれは余裕のある者特有の態度だと言う。

 

 ……意味が分からない俺だが、要するに明日の生活にも困窮する人間には他者を気遣う余裕は生まれないと続けた彼は、だからこそ俺という存在はもっと物資に溢れ余裕に満ちた生活を送っているであろう時代の人間だと踏んだのだというのだ。

 ついでに言うのならば貴族や王族のような富める立場に生まれた人間にしては優雅さに欠けるなんてことも言われたが、とにかくモーリツさんはそんな俺の立ち回りからこちらの素性を見抜いたようであった。

 ……推理の過程はともかく結果的に俺が自分より未来の人間であると言い当てて見せたモーリツさんが只者ではないことはわかる……だけど俺はやっぱりこの人に対して胡散臭さが余計に強く感じてしまう。

 

 だって困っている人を助けるのは……お互いに協力し合って助け合おうと思うのは人として当たり前の事なんじゃないのか?




今回名前が出た動物

ロックエレメンタル(ゴーレム)
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