四百二十九頁目
できる限り簡潔にこのARKの真実を告げていくが、モーリツさんは頭の回転が速いのかすんなりと飲み込んでいく。
ここが遥かな未来であり人類を含めた絶滅動物ばかり集められた宇宙に浮かぶ箱舟であり、汚染された地球の救済計画の一環としてのサバイバル……更にはそのシステムにバグが発生しつつあることなどを聞いてもなるほどなるほどと興味深そうに頷くばかりであった。
しかも的確に大事な内容には突っ込んで聞いてくるため、適当に納得したふりをしているのではなく本当に理解していることは明白であった。
尤も突っ込まれるたびにその内容を詳しく説明しないといけないため、結局話は結構長引いてしまった。
それでも何とか全てを話し終えたところ、モーリツさんはうんうんと何度も頷きながら空を仰いで何事か考え始めてしまう。
ちょうどいいので、もう聞きたいことがないのならばと逃げるように立ち去ろうとするがそのタイミングで新たな狼が襲撃してきた。
先ほど矢を射かけた狼の仲間だったのかもしれないが、即座に口笛を吹いてアルケンを臨戦態勢にしながら同時に俺自身も身体をひねって弓矢で射抜いてやる。
こんな突然の奇襲も長らくARKで過ごしている俺には慣れているから半ば反射的に対応できるのだ。
お陰で手傷を負うことなくあっさりと狼を倒し終えた俺にモーリツさんは拍手と称賛の声をかけてくる。
尤も彼もまた一人で生き抜いているだけあって、いつの間にかその手には鉄製の槍が握られており、しっかりと状況に対応できていたようである。
まだまだ真意こそ読み取れない人だけれど少なくともその優秀さだけは疑いようがない。
……だからこそ余計に胡散臭さを感じてしまうのだけれども……いやだけどやっぱりこの砂漠の危険さは誰にとっても変わらないわけだし、この場所に送られてきた仲間として協力して助け合うべき、だよな?
四百三十頁目
思うところはあったが力を合わせてこのARKを攻略していこうと提案してみたところ、モーリツさんは内容次第だと言う。
その口ぶりからして定期的に顔を合わせて……或いは無線を介しての会話や情報交換ならば問題ないが一緒に行動するのはまだ止めておきたいとのことだ。
……正直なところ、まだモーリツさんに対するモヤモヤが晴れていない俺としてはむしろありがたい話ではあった。
しかし幾らモーリツさんが優秀とはいえいつまでも一人でこの危険な砂漠を放浪していては命が幾つあっても足りないはずだ。
それなのにどうして同行するのを拒むのか……或いは彼もまた俺達のことを信頼しきっていないのかもしれない。
果たしてそんな俺の想いを見抜いているのか、モーリツさんは別に俺を信用していないわけではないがもう少し時間をかけて見定めたいものがあると言葉を続けた。
俺達と別行動してまで見定めたいものとは一体……と俺が首をかしげるところを見て、モーリツさんは何やら楽しそうに笑いながら俺に一つ問いかけてくる。
今この砂漠には君を含めて色んな時代から様々な価値観や異なる常識を持った人が来ているわけだが、どれが一番正しいと思うのか……と。
今回名前が出た動物
ダイアウルフ(狼)
アルゲンダヴィス(アルケン)