二百二頁目
少ししてフローラが目を覚ますと、物凄く泣きわめきながら飛びついてきた。
何とかなだめながら話を聞くと、俺は本当にズタボロでいつ死んでもおかしくない状態だったらしい。
確かに思い返せば気絶する寸前に骨の一つや二つは折れていそうな感覚があったが、今は掠り傷程度しか残っていない。
その癖あれからまだ一日程度しかたっていないという……いったいこの怪我の治りはどうなっているのか尋ねるとどうやらロックウェル氏の残したレシピに書いてあったメディカルブリューを飲ませてくれたからだそうだ。
何でもそれを飲ませたら劇的に体調が回復していったそうで、骨もあっさりくっ付いたという。
そんな不思議なことがあるものかと思うけれど、それ以上にその話をするフローラが顔を真っ赤に火照らせている様子が何やら妙に可愛くて印象的だった。
……まあこの島は俺の想像をはるかに超えたずば抜けたテクノロジーで管理されているのだから、その素材を使えばそんな回復薬染みたものが作れてもおかしくはないのだろう。
二百三頁目
とにかく身体の調子も戻った俺が起き上がろうとしたところ、何やら妙に空腹でお腹が鳴ってしまう。
恥ずかしがる俺にフローラは微笑みかけながら、お肉と果実を組み合わせて調理した食べ物を差し出してくれた。
調理鍋を使って作ってくれたものらしい……生まれて初めて女の子から手料理を貰えた俺は状況も忘れて感激して、夢中で貪りついた。
今まではただ焼いただけの肉ばかりだったから、こうして調理された料理は非常に美味しく感じて……それこそ体力が身体の奥から湧き上がってくるような感覚がした。
だから隣で執拗に味を尋ねてくるフローラにとても美味しいと伝えてあげると、嬉しそうに微笑みながら次から次へと料理を持ってくる。
流石に全ては食べきれない……だけどこの純粋な瞳には逆らえない。
とりあえず限界まで食べよう……そして残ったものは……こんな可愛い少女が俺のために作ってくれた手料理を腐らせてなるものか。
冷蔵庫は無理にしても、何か上手く食料を保存できる家具を作ってみよう。
二百四頁目
食事を終えた俺をフローラはもう少し安静にしているよう訴えてきたが、余りのんびりとはしていられない。
この場所だって長居すれば恐らく先ほどと同じ様に危険な動物に襲われるようになるだろう。
その前に新しい場所へ飛び立つ支度をしなければならないのだ……そう伝えるとフローラは少しだけ怯えた様子を見せながらもはっきりと頷いてくれた。
そして家の中で出来る作業は任せてほしいと言ってくれたので、彼女に工作関係を任せて俺は素材を集めるだけ集めて家の中に仕舞っていくことにした。
その際に収納用の箱というか棚のようなものを作っていき、さらに考えていた食料保管庫も作成してみた。
仕組みとしては発火粉を低温で熱することで、食料の水分を抜いて殺菌して短期間だが腐敗を遅らせるというものだ。
もちろんこれも左手の鉱石を見ながら作ったものだが、相変わらず素人の俺ですらしっかりとしたものに仕上げることができた。
……ふと気になってフローラに尋ねてみたが、あの手料理はこれで思いついたものではなく自分で工夫して作ったものらしい。
その料理の才能に感激しつつも、俺もまた左手の鉱石を見つめながらロックウェル氏が考えたというメディカルブリューや前に日記で読んだ記憶を無くす薬とやらの作り方を考えてみたが全く思いつかなかった。
何故料理は思い浮かばないのか不思議だが、こうなると自力でメディカルブリューのような素晴らしい薬を編み出してレシピを残してくれたロックウェル氏への尊敬がさらに強くなる。
何せあの方が居なければ俺は間違いなく死んでいたのだから……ロックウェル様々だ。