四百七十二頁目
狭い渓谷の中をぶつからないよう飛ぶのは中々に至難の業だ。
尤も前の島で樹液の取れる木々の間を潜り抜けていた経験もあり、俺は特に苦にはならなかった。
またキャシーも巧みにアルケンに指示を出すことで問題なく飛べている。
……問題はソフィアだ。
この今まで探索した場所とは地形的に全く異なる環境故に新しい素材か何かがないかと調べることにしたのは良いが、そのせいでソフィアは余計に周りを見る行為に集中してしまっていた。
お陰でアルケンの扱いがおろそかになり、何度も壁にぶつかりそうになっていて危なっかしいことこの上ない。
仕方なく移動速度を緩めてゆっくりと進むことにした。
ただそこまでしても目新しい素材も無ければ、有益そうな動物の姿もない。
また道自体も大きくうねっているとはいえほぼ一本道であり、途中で何か所か分岐があったがすぐに合流してしまう。
この調子だと新しい発見はなにもなさそうだが、念のため分岐したルートも細かくチェックしておこうと両方を通っていく。
もちろんそんなことをしても何も見つかりはしない。
そのうちにソフィアの操縦で疲れたのか彼女の乗るアルケンが壁の途中にある足場となりそうな場所に降り立って休憩を始めた。
……と思ったのだがソフィアはアルケンの背中から飛び降りると壁の方を見たかと思うと、俺達を呼び寄せた。
果たして同じく降り立って壁を見ると、渓谷の陰に紛れるように口を広げている新たな横穴があるではないか。
耳をすませば奥から蝙蝠の鳴き声も聞こえている……これは今度こそ洞窟の入り口と考えて間違いなさそうだ。
四百七十三頁目
入り口付近は安全そうなのでアルケンで軽く出入りしてみるが、思った通り先に進むのを嫌がり始めた。
これで間違いなくここはアーティファクトのある洞窟なのだと確信できた。
そう二人に告げると初めて洞窟を目の当たりにしたキャシーは少し前のソフィアと同じように……そして多分かつての俺と同じような興味津々という様子を見せた。
それに対して先ほど洞窟を見ていたソフィアはもう少しだけ冷静なようで、入り口の大きさから連れ込めそうな動物を見繕っているようだった。
……だけどやっぱりソフィアも興奮しているようで、大事なことを忘れている。
それはここが渓谷のしかも壁にほんの少し足場のある場所であり、外と地続きであった地面からは距離があるということだ。
一応周りを見回してみるとアーチ状の足場が続いているので、或いは辿っていけば飛べない生き物でもここまで歩いてこれるかもしれないが、足場自体が狭いため余り大きな生き物では滑って落ちてしまいかねない。
そして落下時の衝撃を思うとそんな危険な移動方法を試すのは止めておきたいので、自然とここに連れ込める生き物は洞窟の大きさに関わらずアルケンで掴んで運べる動物程度と思うべきだろう。
そう考えるとやっぱりここもコレオちゃんの同種で攻略するのが一番な気がする。
今回名前が出た動物
アルゲンダヴィス(アルケン)
ティラコレオ(コレオちゃんの同種)
今回見つけた洞窟
The Old Tunnels(門番の洞窟)