四百九十四頁目
珍しいことに今日はキャシーに朝一で起こされた。
大体早起きするのはソフィアなだけに驚きだが、興奮した様子の彼女に手を引かれるまま牧場の片隅に作られていた真四角な孵化小屋へと向かう。
もうその時点で大体想像はできていたが、果たして中に入ってみるとエアコンによって完全に空調管理された部屋の中心でソフィアがニコニコしながら小さなメタリックに輝く動物の模型……ではなくTEKラプトルの幼体を相手にしていた。
……ああ、まさか本当にメカ生物がそのまま生まれてくるとは。
ARKの、いや未来世界のテクノロジーの凄まじさを改めて思い知らされる。
だけど次いで俺の脳裏に思い浮かんだのは、TEK生物の繁殖牧場を作れば電子基板を始めとした希少資源をより効率よく採取できるのではという発想であった。
……ペンギンちゃんの時と言い、我ながらARKという環境に適応してきているというか思想が野蛮染みてきたというか……
まあやるかどうかはみんなと相談して決めるとして、もしやるとなったらその際は近くに慰霊碑もどきのお墓でも立てて毎日拝むとしよう。
四百九十五頁目
昨夜決めた通り今日は皆で外周部の砂漠を探索しに行く。
ただその前に朝食を食べつつ、この拠点を施錠しているかどうかを軽く話し合った。
新しく来る人々が動物に襲われた際に駆け込んでくる可能性を思えば開け放していくべきだろう。
しかし前に荒らされたことを思うと、今回は科学作業台などがある移動拠点のパララ君を始めとした貴重な動物や素材を置いていくため、そこに盗みに入られたりすると非常に困ることになる。
だからと言って他の生存者を見捨てるのもどうかと思い、結局すぐ傍に逃げ込みやすい簡易な小屋を作っておくことにした。
中には電線だけ引っ張ってきて温度管理用のエアコンとサボテンスープにこんがり肉を入れた冷蔵庫を稼働させておいた。
その上で小さい正方形の収納ボックスを作り、その中に『自由に休息してください』『食べ物と水は他の生存者の方のためにも必要な量だけお取りください』と書いたメモ書きを残しておいた。
これで何も憂うことは無くなった俺達は、改めてアルケンに別れて乗ると拠点を飛び立つのだった。
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まず向かったのはソフィアが二つ見つけた遺跡のような跡地のうち近い方だ。
まっすぐ向かってみると、砂に埋もれるようにしてそこそこの数の建造物が密集していた跡がはっきり残っている。
前の島でフローラが村にしようと北部に作った大規模な拠点に似た大きさを見るに、もしもこれが前にここにいた人間が作ったものならばかなりの規模のトライブだったようだ。
しかしそれがどうしてこうも寂れているのか……そもそもヘレナ氏などARKを移動している者はともかく、ここに残って生きようとする人もいるはずだが彼らはどうしてしまったのだろうか?
なんてことを考えている俺の傍ではソフィアが凄く真剣にあちらこちらを観察して回っている。
恐らくはこういう場所に良く隠されている日記を見逃すまいとしているのだろうが、安全のため高度を保っているせいで陰に隠れている部分はどうしても見辛くて仕方がない。
だからと言って着地するわけにもいかない……この辺にはサソリが沢山いる上、あの危険なサンドワームがどこに隠れているかも知れないのだから。
今回名前が出た動物
TEKユタラプトル
カイルクペンギン
プルモノスコルピウス(サソリ)
デスワーム(サンドワーム)