ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第682話

五百二十六頁目

 

 一人残されたモーリツさんは流石にこうなるとは思っていなかったようで、呆れているとも困っているともとれる苦笑いを浮かべていた。

 尤も予想外なのは俺の方も同じなのだが、こうなっては仕方ないので取りあえずこちらから話しかけてみることにした。

 まず目的は情報交換であるかを確認し、モーリツさんが頷いたところで俺から幾つか尋ねてみることにした。

 

 前に井戸を見かけたことがあったがあの付近がモーリツさんの拠点なのかと、前はこのエリアで頻繁に聞こえていた人の悲鳴が殆どなくなったのはモーリツさんが関係しているのか……するとどちらの質問にも彼は首を縦に振って見せた。

 尤も生存者に関しては助けて回っているというより恩を売って回っているというのが正しいらしい。

 どれだけ有能な人材であっても最初は裸で目覚めるため、熱に強い衣服と皮の水筒に食糧を差し出せば簡単に恩を売ることができるのだそうだ。

 

 更に言えば狼や巨大な鶏……多分ラプトルのことだろうが、それらを飼いならしているらしいモーリツさんはこの辺の動物なら駆除することができる。

 だから護衛だとかなんだとかいえば行動を共にすることも容易いらしく、そうやって多くの人と交流しながら優秀そうな人材を見極めて回っているらしい。

 そんなモーリツさんの目的はやはり前に言った通り、この砂漠に最も適したルールの社会を築き上げられる存在の作ったトライブに所属することのようだ。

 

 もちろんその際は最初に売った恩を活かしてナンバー2、とまではいかなくても高い地位に就くことも目論んでいるという。

 ……意外にもそう語るモーリツさんは前回までと違って余り胡散臭いようには感じられなかった。

 まあ単純にそういう演技をしていて俺が見抜けていないだけの可能性もあるけれど、一応上空で待機しているソフィア達が望遠鏡なりガイドロボットの機能?を使って詳細に観察してくれているはずだ。

 

 更に会話は地味に無線をオンにしっぱなしにすることでソフィア達にも届いている。

 これで何かを感じれば合図をしてくれることになっているが、やはり今のところは特に反応もない辺りモーリツさんは正直に語ってくれているようだ。

 

五百二十七頁目

 

 ある程度質問に答えてもらったところで、今度はモーリツさんの方から気になることがあると質問してきた。

 どうもモーリツさんは先日俺達が外周部の砂漠へメンバー全員で飛び立っていくのを見ていたようで、みんなで出向くほどの発見があったのか尋ねてきた。

 同時にもう一つ、外周部の砂漠がどうなっているのかにも詳細な情報を求めてきた。

 

 何でも新しくやってきた生存者の多くが、仕方ないこととはいえこの場所が宇宙に浮かぶ箱舟だという話を信じていないようであった。

 そのためモーリツさんの支援である程度の戦力が整うと脱出のために外周部の砂漠へ向かい……そのまま戻ってこない者が後を絶たないそうだ。

 しかしその事実を認識させても、戻ってこないのはこの砂漠を抜けて違う場所にたどり着けたからだと解釈してやっぱり外周部の砂漠へ飛び出す者が多くて困っているらしい。

 

 ……まあさっきの生存者みたいに狼とかラプトルを飼いならせばこの辺の動物相手には無双できるわけだし、そうやって気が強くなったら帰るためにも外周部の砂漠へ向かいたくなる気持ちはわからなくもない。

 実際に俺も前の島においては外周部は海だったわけだが筏を作れるようになった時点で飛び出して……鯨みたいな野郎に酷い目に合わされたのを今でもはっきりと覚えている。

 だから多分外周部の砂漠へ踏み出した人達もサンドワームという化け物に襲われて……モーリツさんの戒めを聞かなかったという意味では自業自得かもしれないが酷い話だ。

 

 しかしこうして考えるとあの鯨もサンドワームも生半可な生存者では外周部に近づけないよう、というよりもエリア外との間を区切るバリアに気づかせないために番人として置かれているのではないかという気になってくる。

 ……そういえば前の島では結局あの憎き鯨に復讐することができなかったなぁ、八つ当たりかもしれないが犠牲になった生存者の分も戦力が整い次第こっちのサンドワームはたくさん倒してやるとしよう。




今回登場した動物

ダイアウルフ(狼)
ユタラプトル(巨大な鶏)
リードシクティス(鯨)
デスワーム(サンドワーム)
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