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どうもモーリツさんは左手首に埋め込まれている異物に気が付いた時点で色々と試しており、お陰で早い段階でクラフトを思い付けることにも気が付いていたようだ。
それでも俺達と初めて出会った際は動物や装備を含めた戦力の差もあり、その上でこの弱肉強食な世界に適応している人間なだけに下手に刺激して敵に回しては不味いが、かといってペースを握られたらそのまま言いなりにされてしまうと物凄く警戒していたらしい。
しかし顔を合わせての俺の態度が彼の言うところのものが溢れている未来人特有の余裕が見えていたため、カマをかけて本当に信頼できる人間か試していたらしい。
そして実際に俺がほぼ何の見返りもないのにクラフトや動物を仲間にする方法を教えたこと、また次に出会った時にも誠実な対応に変化がなかったことで手を組むには甘いけれど裏切ったりするような相手ではないと見極めたようだ。
だからこそそういう相手には誠実に対応した方が逆に不審に思われないだろうと判断したモーリツさんもまたこうして色々と正直に話してくれるようになったようだ。
実際にカマを掛けた件に加えてモーリツさんはもう一つ、実は俺達の最初の拠点を荒らしたのも自分であったと改めて謝罪してきた。
尤もその時のモーリツさんはこのARKで目を覚ました直後であり、本当になんの余裕もなかったがための行為であったという。
だからゴーレムに壊されていた防壁の隙間から中へ入り人を探し、誰もいないとわかると、とにかく使えそうなものを片っ端から集めて回ったという。
ただお墓を荒らしたのは彼ではないらしい……というかモーリツさんが中に入った時点で墓は暴かれており、その近くには狼がうろついていたらしい。
果たして鼻が利く狼が何かをかぎつけて暴こうとしたのか、それとも別の誰かが先に逃げ込んで墓を暴こうとした矢先に狼に襲われたか……それは分からない。
しかしそこでその狼たちは近くへ降り立ったモスラの同種に気づいて襲い掛かり、その際に誤って岩に擬態していたゴーレムを傷つけて目覚めさせてしまった。
そうして突然動き出したゴーレムに驚きながら必死に拠点の残骸の奥へ身を潜ませて騒ぎが収まるのを待ったモーリツさんは、これ以上ここにいるのは危険だと立ち去ることにしたそうだ。
……ただあえて言及しなかったようだが恐らくモーリツさんは立ち去る前にわざわざ暴かれた墓を元に戻して行ったのだろう。
近くにまだ危険なゴーレムが擬態しているというのに……やはり彼は生き残るために冷静な立ち回りを心がけてこそいるが本質的には他人を思いやれる人のような気がする。
今回名前が出た動物
ロックエレメンタル(ゴーレム)
ダイアウルフ(狼)
リマントリア(モスラの同種)