ARK とある青年の日誌   作:車馬超

695 / 1041
第695話

五百五十頁目

 

 モーリツさんの懺悔というか謝罪を受け入れたところで、改めて移動拠点のパララ君二号を彼に譲渡した。

 初めてトライブの人間でない人に動物を譲ることになったわけだが、パララ君二号は最初のうちこそ困惑した様子をしていたが一度モーリツさんに懐くともうこちらには反応しなくなっていた。

 ……この唐突な変化には俺もモーリツさんも、そして少し離れたところで黙って俺達の会話を聞いていたキャシーも驚いたが、恐らく簡単にテイムできるのと同様にあえてそのように調整されているのだろう。

 

 多分ある程度の知性があるから自分の主となる人間のトライブの仲間かどうか見分けることができるから、命令を聞くべき相手もしっかり認識できるのだろう。

 とにかく譲渡も上手く行った今、お互いにやることもあるわけで子のまま一緒に居ても仕方がない。

 既にキャシーなど帰るために護衛の動物を操り始めており、俺もパララ君二号から降りて適当な動物に乗り移ろうとした。

 

 しかしそこで不意にモーリツさんがキャシーを見ながら、前に無線機で語り掛けてきた女性は彼女とは別人だろうかと問いかけてきた。

 良く分からない質問ながらも頷いた俺に彼はやはりと呟いたかと思うと、どこか剣呑とした様子で自分に似て抜け目のなさそうな女性だなと口にした。

 ……モーリツさんに似て? いや何を言っているのだろうか?

 

 困惑する俺だったがモーリツさんはそれ以上キャシーに言及することなく背を向けてパララ君二号の手綱に手を伸ばしていた。

 つい何か聞きたくなる俺だったが、そこでキャシーがこのままだと日が暮れちゃいますよーと声をかけて来た。

 確かに地上を移動したせいでかなりの時間を使っていて、空を見上げれば太陽が沈みかけているではないか。

 

 慌ててパララ君二号から降りるとキャシーとは別のカルノンの同種へ乗り、今度こそ帰路へ付こう……としたところでモーリツさんが別れの言葉を掛けてきた。

 あの夢見がちな女性にはもう少し現実的に考えるよう忠告しておいてくれたまえと……

 ただ今度のモーリツさんの表情は言葉とは裏腹にどこか楽し気な微笑みが浮かんでいるのであった。

 

五百五十一頁目

 

 地上の移動が久しぶりなこともあり、ついつい時間の判断が甘くなっていたようだ。

 キャシーに急かされて移動を開始したは良いが、このペースでは日が暮れるまでに緑のオベリスクがある拠点まで戻れそうにない。

 もちろん連れてきているアルケンに乗れば俺達だけは帰れるだろうが、重要な戦力であるカルノン達とコレオちゃん達を置いていくわけにはいかない。

 

 どうするかキャシーと軽く話し合ったところ近くにあるTEKラプトルが居る拠点に戻るのはどうかということになった。

 あそこまでなら日が暮れるまでに戻れそうだし、その上で地上の動物を置いて帰ってもいいしそのまま朝まで休んでもいい。

 そう判断して移動を開始するが、相変わらずキャシーは俺以上に巧みに動物を乗りこなしつつ追従させた子達も地形に嵌らないよう上手に誘導してくれていた。

 

 ……このARKに来て俺より過ごした時間は短いはずなのにこの上達っぷりはやはり才能の差なのだろうか?

 なんて思いながらキャシーに遅れないよう横に並んで進んでいると、不意にキャシーが前を見つめたままぽつりとつぶやいた。

 あのモーリツという人、余りソフィアには会わせたくないですねと。

 

 不意に何を言い出すかと思ったが、そこでこちらに振り返ったキャシーは珍しく笑みを消しておりそれこそ先ほどのモーリツさんの様に剣呑な雰囲気を醸し出していた。




今回名前が出た動物

パラケラテリウム(パララ君二号)
カルノタウルス(カルノン)
アルゲンダヴィス(アルケン)
ティラコレオ(コレオちゃん達)
TEKユタラプトル
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。