五百五十二頁目
続けてキャシーが語ったところによると、モーリツさんは彼女が元居た場所でたまに見かけた脛に傷があるような荒事に慣れている輩にそっくりだと言うのだ。
具体的にはこちらの携帯している銃を自然な動作で注視しており、手を伸ばそうものなら即座に対応できるよう身構えていたという。
……そういえばキャシーはゴールドラッシュ時代といういわゆる西部劇のようなところから来ていた。
つまり拳銃の使い手を見る機会は俺よりは遥かに多かっただろうし、そんな彼女が抱いた印象なら正しいのかもしれない。
実際に俺もモーリツさんはこういうサバイバルにも慣れているとは思っていたし、拳銃の扱いは元より荒事にも慣れていても不思議ではない。
ただこれまで出会って会話してきた中で俺個人としては余り危険な人物ではないと思えてきたところだった。
しかしキャシーは先ほどの会合で何か思うところがあったのか、とにかく次からも自衛が出来る自分が対応するからソフィアには近づけないで欲しいと頼み込んでくる。
……まあ確かにこれから先もモーリツさんと会う時は別の人を連れている可能性が高いし、銃と動物の扱いに慣れているキャシーと一緒の方が修羅場になっても安全ではあるし、別段断る理由はない。
だから頷いて見せるとキャシーは安堵したように胸を撫で下ろしたかと思うと、またいつものように明るく微笑みながら日が暮れる前に急ぎましょーと俺と動物達を急かしてくるのだった。
……相変わらず表情がコロコロ変わるなぁ……感極まったら抱き着いてくるところといい感情に正直な人だからだろうけれど、その辺も含めてやっぱりモーリツさんに似ているとは思えないんだけどなぁ……?
五百五十三頁目
このARKで目を覚まして以来、キャシーとソフィアはいつだって一緒に夜を明かしていた。
だから最初のエリアにある拠点に泊ると告げると、珍しくソフィアが駄々をこねてきた。
碧のオベリスクという目立つ目印があるのだから真っ暗でもアルケンで返ってこれるのではとか、逆に電化しており電灯で夜でも明るくなっているこっちの拠点に自分が向かおうかとか何度も何度も提案してくるのだ。
よほどキャシーと離れて夜を過ごすのが寂しいのか、或いは心細いのか……単純にハンスさんやルゥちゃんが頼りないというわけではなく、彼女にとって初めて出会ったキャシーは特別な存在であるようだ。
そうやってソフィアに呼びかけられるたびキャシーは嬉しそうにしたかと思うと、自分が決めたことだというのに物凄く悩まし気に何度も何度も緑のオベリスクの方角へと視線を投げかけていた。
……そうこっちの拠点に残りましょうと言い出したのはキャシーであった。
どうもキャシーはよほどモーリツさんのことを警戒しているらしく、移動拠点をどう使うか……実際に夜中も見回るのか確かめたくてここに残って確認したいというのだ。
何せ今夜なら新品の発電機が壊れる心配はないため背中に乗せている電灯が目立ち、モーリツさんが活動していればここからでもその様子を多少は確認できるはずだ。
まあ俺個人としてはモーリツさんが生存者を救助するというのが移動拠点欲しさについた嘘、だなんて思っていないが実際にどう活動しているのかは知っておいても損はない。
もちろん夜間の移動が危険だからというのもあってこちらの拠点に滞在することにしたのだが……ソフィアの呼びかけにキャシーは思いっきり心苦しそうにしている。
ちなみにハンスさんもソフィアと一緒になってこちらに戻ってくるよう言ってきているが、多分こっちもキャシーに戻ってきてほしいのだと思う。
……だって前に俺が一人で別の場所で夜を過ごすときはこんなに呼びかけられなかっ……あれ? ひょっとして俺って要らない子なのかぁ!?
い、いや単純に俺はこのARKという場所に慣れているから心配する必要がないって思われてるんだよっ!! 逆に頼りにされてるってことだよなきっとっ!!
そうだろフローラ……ねぇなんでそんな可哀そうな人を見る様な笑顔でこっちを見てるのぉ……
あ、よく聞けば後ろの方でルゥちゃんが俺のこと呼んでくれてるぅ……うぅ、良い子だなぁルゥちゃんは……