ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第698話

五百五十六頁目

 

 久しぶりに筆を執る……と言っても書くことこそ多いけれど、あれからそれほど時間が経っているわけじゃない。

 具体的には数日ほど色々な作業に没頭していたが、明日からは少しばかり危険になるため一息付けたこのタイミングでこれまでの経緯をまとめておくことにしたのだ。

 取りあえずあの後のことから書くが、朝起きた俺達はすぐに緑のオベリスクへと戻り……真っ先に水浴びを行った。

 

 やはり砂漠において水を使い放題な拠点は最高だった……しかもハンスさん達が電化製品も完備しておいてくれたお陰で冷たい水も飲み放題で快適極まりなく、外から聞こえる動物の咆哮さえなければまるで別荘のようだった。

 もしも前日の時点でやる気を出していなければちょっとだけ自堕落に休んでしまいたくなったかもしれない……何てのは冗談で、本当は工業炉と科学作業台が完成したことで出来ることは格段に増えており、むしろやっておきたいことは多すぎるぐらいであった。

 

 取りあえずは出来たばかりの工業炉から回収した大量のインゴットの使い道を相談した結果、コレオちゃん用の高品質サドルを可能な限り作っていくことになった。

 これによりコレオちゃんの防御力が上がれば外周部の砂漠における狩りがよりし易くなり素材集めの効率が上がるからだ。

 もちろん数が揃えばその時点で洞窟攻略を始めることも出来る。

 

 だから皆で手分けして拠点の周辺から金属鉱石を回収して工業炉に放り込みつつクラフトする係と、現時点の素材で幾つか作れた高品質サドルを装備したコレオちゃん達を引き連れて外周部の砂漠での狩りをする係に別れることになった。

 これがまた非常に上手く行きとんとん拍子に素材が集まり、コレオちゃんの高品質サドルはあっという間に数が揃いつつあった。

 また高品質サドルを装備したコレオちゃんの同種が二桁に達した時点で再びゴーレムに挑んでみたところ、上手く攻撃を受ける個体を調整することで危なげなく倒せるようになっていた。

 

 そしてゴーレムの死骸からは原油を始めとした希少資源が幾つも回収できるため、これにより素材不足の心配はほぼ解消された。

 更にもう一つ、TEKラプトルの繁殖も物凄く上手く行って遂に成長した個体から素材の回収を行えるようになった。

 まあ流石に最初の個体を処理するときは胸が痛みそうになったが、この場所で必要以上に動物にまで情を寄せていたら命取りになるのは今まで何度も体験してきたことだ。

 

 それでもTEK個体からしか取れない素材であるエレメントダストの存在がなければ手を掛けるのを躊躇してしまったかもしれない辺りは、モーリツさんが居合わせたならまたしても甘いと言われてしまいそうだった。

 ……ただその際に殆どの仲間が俺と同じように感じている中、唯一キャシーだけは悲し気にしながらも仕方ないとばかりに早い段階で割り切っていたようで処理を躊躇していた俺に代わってじぶんがやりますかとまで言い出してくれた。

 恐らくは牧場経営に関わっていたかつての経験から、生活のために動物を処理せざるを得ない場面も多くあり、それで手慣れていたからかもしれない。

 

 もちろん彼女だけに手を汚させるつもりはなく、むしろ自分が言い出したことなのだから責任を取るべく最初の一匹は俺が処理することにした。

 その後、自己満足かもしれないが供養のつもりで墓石を作り解体した後の素材の一部を埋めて手を合わせた……これは二匹目以降もずっと同じようにしている。

 ただTEKラプトルの処理に関しては俺だけの役割にすると効率が落ちるため、俺とキャシーで手の空いている方がやることになった。

 

 ……何故キャシーだけかというとTEKラプトルを処理する際に手間取ると抵抗される危険があるため、多少トラブルが起きたり暴れられたりしても対応できる護身技術のある者がやるべきだと判断したためだ。

 後、一応慣れていそうだからというのもあるが実際にキャシーはやると決めたら少しでも痛みを少なくしようと的確に淡々と処理していた。

 ただ何も感じていないわけがなくキャシーも処理し終えた後は墓石に向かって手を合わせていたが、ともかくこうしてTEK牧場が完成したことでエレメンタルダストまで定期的に手に入るようになった。

 

 また処理するのは雄個体だけで雌個体は成長した時点で繁殖係として卵を産む側に回って貰っているため、ドンドンTEKラプトルが増える速度も上がっていっている。

 これに関しても大丈夫だとわかっていても当初は近親間での配合にそれこそキャシーも含めてみんな思うところがあったようだが、最初に生まれた個体が何の問題もないと知るとすぐに慣れてしまった。

 むしろ個人的には一頭だけいる雄が無数の雌に囲まれて群がられながら色々と搾り取られてどこか辛そうにしている姿の方に何となく同情的になってしまうのだった

 

 ……こうして文字に書き起こしてみると数日とはいえ工業炉の完成によって一気に飛躍した感が強くなるが、まだ書くべき内容は残っている。

 ただこのまま余り夜更かしして書き続けるのも問題だ……何せ明日はついに洞窟へ挑むのだから。




今回名前が出た動物

ティラコレオ(コレオちゃんの同種)
ロックエレメンタル(ゴーレム)
TEKユタラプトル
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