ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第736話

六百三十頁目

 

 モーリツさんもジャンケンを知らなかったようだが似たような決め方をしたことがあったらしくあっさりとルールを飲み込んでしまった。

 その上で変な手を出すこともなく普通に勝負してソフィアに勝利を収めると、早速グラップリングフックを引っかかりそうな出っ張りに打ち込んで壁をよじ登っていった。

 この動きもまた中々に巧みであったが後で聞いたところ船に乗った際にロープの昇り降りをしたことがあり、その経験を生かしたとのことだ。

 

 そうしてササっと当たり前のように黄色いカプセルを開けて中身を回収して戻ってきたモーリツさんの手にはチェーンソーの設計図と少しだけ品質のよさそうな鞭が握られていた。

 鞭の方はともかくチェーンソーの設計図は地味に役立ちそうな品であるが、やっぱり回収してきたモーリツさんに所有権はあるだろう。

 モーリツさんもそのつもりでいるようだが無駄なトラブルを起こしたくないのは向こうも同じようで、必要ならまたいつでも貸し出してくれるとのことなので取りあえずは良しとしよう。

 

 まあソフィアは物凄ぉく恨めしそうに指をくわえて見ていたし、そんな彼女を見てルゥちゃんも見様見真似とばかりに同じような態度を取っているけれど放っておくことにしよう。

 ……しかしそうかモーリツさんはもう黄色いカプセルを開けられるほど経験を積んでいたんだなぁ。

 

六百三十一頁目

 

 駄目だ、いくら調べても他の道が見つからない。

 これではあの蜘蛛の巣だらけの隙間を通らざるを得ないようだ。

 しかしいくら頑張ってもコレオちゃんの体格では通り抜けられない。

 

 つまりこのまま進もうと思ったら動物を置いて生身で行かなければならないのだが流石にそれは危険すぎる。

 サイズ的にコレオちゃん達より小さな狼ぐらいのサイズなら通り抜けられるかもしれないし一旦戻ってそういう動物を捕獲してから再挑戦すべきだろう。

 ……或いはコレオちゃんの幼体を連れ込んで中で育ててから攻略するのもアリかもしれない。

 

 この先の地形がもし複雑になっていた場合を思えばやはり壁をよじ登れるコレオちゃんが居てくれた方が心強いのだから。

 

六百三十二頁目

 

 狼のような小型の動物を連れ込むにしてもこの隙間の向こう側でコレオちゃん達の育児場を作るにしても、とにかく今回は引き返す必要がある。

 しかしそんな俺の提案を聞いたモーリツさんは納得したように頷きつつも、少しだけ中を偵察してからにするべきではと異議を唱えてきた。

 何せ中がどうなっているのかわからなければ引き返しても無駄になる可能性があるというのだ。

 

 それこそ進んだ先にもっと狭い場所などがあったりして結局は動物を連れ込めなかったり、もしくは別の何かがあり特定の動物を連れ込む必要性が出てきたり……確かにそうなったらまた出直す羽目になりかねない。

 また中に育児場を作るにしたら安全を確保するために防護柵を置けるスペースを見繕っておく必要がある。

 それらを総合的に考えるとこの先がどうなっているのか調べておくのは非常に意義のあることであるが、だからといって動物抜きで進むリスクの高さも無視できないところだ。

 

 ただしゃがみ込んで隙間の向こう側を観察してみたところ、近いところからは生き物の気配などは感じられなかった。

 もちろん穴から飛び出してくる害悪の様に息を潜めている奴などが隠れている可能性はあるけれど複数人で慎重に進めば少しぐらいなら大丈夫だと思われた。

 ……問題は誰が行くかの人選になる。

 

 まずルゥちゃんは連れて行くわけにはいかないし、かといってコレオちゃん軍団が居るとはいえここに一人残しておくわけにも行かない。

 だから四人のうち二人がここで待機して残る二人が奥を見てくることになるわけだが、生身で出向く危険な作業となればやっぱり俺が行くべきだろう。

 同時に女性であり危機への対応に不安が残るソフィアもここに残っていて欲しいわけだがこうなると必然的にモーリツさんと一緒に出向くことになる。

 

 ……少しの間とはいえ同じトライブの人間でないモーリツさんと動物すら抜きで二人っきりになるのか……いや信じていないわけではないけれど何となぁくヘンな気分だ。




今回名前が出た動物

アラネオモーフス(蜘蛛)
ティラコレオ(コレオちゃん)
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