ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第737話

六百三十三頁目

 

 モーリツさんは自分から言い出したことだからか、動物抜きでの探索という危険な作業にも付き合ってくれるようだ。

 生身で行こうとする俺達を先ほどまでとは一転して心配そうにしているソフィアであったが、彼女にはルゥちゃんの面倒と非常時に備えて臨戦態勢で居てくれるよう頼んでおいた。

 ここに新たな敵勢動物が湧いた時への備えという意味もあるが、万が一向こうで変な動物に襲われてここへ逃げ帰ってきた俺達を援護できるようにだ。

 

 そうして神妙な様子で銃を手にじっと俺達を見つめ始めたソフィアに後を任せると、俺達は何かあればすぐに対処できるよう注意を払いながら進んで行く。

 しかしそんな俺達の警戒を嘲笑うかのように特に何かが起こることもないまま、少し歩いただけで広くなっている空間に出ることができた。

 あれだけ意味深に壁に張り付いていた蜘蛛の糸は何だったのか、そこにも動物の気配はなく比較的安全そうであった……が室内を見回した俺は思わず息を飲んでしまった。

 

 ……何故なら壁際のあちこちに無数の人骨が転がっていたのだから。

 余りの数にここで大虐殺でも起きたのではないかと想像した俺は、これだけの人間を返り討ちにした凶悪な動物が近くにいたら不味いとモーリツさんと共にすぐにコレオちゃん軍団の居る場所まで引き返そうとした。

 しかしそんな俺に対してモーリツさんは冷静に人骨を観察したかと思うと壁に視線を移し……そこで初めて俺は壁が人為的に加工されていることに気が付いた。

 

 それは壁全体を削って強引に人が寝そべれる空間を何段にも形成しているようで、そこには同じく人骨が詰められていたり或いはカピカピのミイラ状態になりながらも原型をとどめている人の亡骸が横になっていた。

 これはひょっとしてと俺が思うまでもなくモーリツさんが、ここは本来墓地として使われるべき場所だったようだなと納得したように呟いた。

 ……結構修羅場をくぐってきたから大抵のことには冷静に対処できるつもりだったのだが、いきなり目の当たりにした人骨に取り乱して見当違いのことを考えてしまった俺はまだまだのようだ。

 

 しかしこんなものを目の前にしてもよくぞまあモーリツさんは冷静に状況を整理できたものだ。

 まあ結論を述べる際にほんの僅かに安堵のため息をついていたように見えたし、或いは平静を装っていただけなのかもしれない。

 とにかく状況を理解したこともあり、また周辺に動物の気配が未だ感じられないので少しだけ気持ちに余裕が生まれてくる。

 

 モーリツさんも同じようで改めて人骨の数々や壁の状態などを観察しながら雑談するように話しかけてきた。

 曰く、この人の骨を見た際に反射的に動物による犠牲だと判断して一緒に撤退しようと言った俺はやはり甘すぎるのではないかと……。




今回名前が出た動物

アラネオモーフス(蜘蛛)
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