六百三十七頁目
どうやらモーリツさんは洞窟攻略よりも俺に忠告する機会を待っていただけのようだ。
しかし彼としてはそう思われたくないのか、少し先まで調べてみようかと提案してくる。
カプセルに入っている貴重品がどうとか、また冒険家として洞窟の奥に眠るというお宝を一目見てみたいとかいつもの胡散臭い表情で言っているがまるで何かをごまかすかのように少しだけだが早口になっている。
まあ元々俺としてはこのルートがどうなっているのか調べておきたかったからむしろ好都合である。
だからあえて何も突っ込むこともなく二人で再び前に進もうとした……ところで無線機から幼さの残る声が聞こえてきた。
一瞬ルゥちゃんかと思ったが声に違和感がある上に俺ではなくモーリツさんの名前を呼んでいた。
不思議に思いながらモーリツさんを見ると彼には心当たりがあるようであり、どうもパララ君二号を操縦していた人であるようだ。
……確かにモーリツさんは自分の無線機を置いていっていたからこうして連絡してこれるのも納得だが、しかしまさかあれほど巧みに動物を操っていた相手が子供であろう事実には驚かされる。
尤もリスク管理がしっかりしているモーリツさんが同行を許可する以上は万が一反乱されても簡単に鎮圧できる相手を選ぶだろうし、そう考えると力の弱い子供という存在はむしろ打ってつけの存在なのかもしれない。
けれど俺にはモーリツさんの優しさから幼子を保護しているように思えて……いや思いたいところだった。
ただそんな俺の思惑とは裏腹にモーリツさんは無線機の向こうから困った様子でトラブルが起きたことを告げてくる声に淡々と自分で考えて処理するよう言い含めて無線を切ってしまうのだった。
そして俺に無線を返しながら、どこか遠い目をしながら呟いた。
余り子供に懐かれても困る……いつまでも保護者が傍に居られるとも限らないのだからと……。
……全くもってその通りだ、この過酷すぎるARKではいつ誰が命を落としてもおかしくはないのだ。
これだけ慎重に行動しているモーリツさんだって……ここまで多くの経験を積んできた俺だって……多分例外はない。
だからこそ優秀なモーリツさんはその辺りのことも考えた上で自分に頼らずに子供が一人でも生き抜けるよう色々な経験を積ませようとしてあえてあんな冷たい返事をしたのだろう……多分。
六百三十八頁目
一応戻らなくていいのか聞いてみるが、やはりモーリツさんは少しの間ぐらい自力で乗り切って貰わないと困ると首を横に振って見せた。
どうも洞窟攻略の同行を申し出たのは同行者の子供の成長を促すためでもあったらしい。
本当に色々と考えているんだなぁと感嘆している俺であったがそこでモーリツさんに、だから君もあのような幼子をこのような場所に連れてきているのだろうと言われてしまった。
……どうやらモーリツさんは洞窟攻略にルゥちゃんを同行させている訳を一人でやっていけるよう色々と経験させているのだと思っているようだ。
その判断は見事なものだとか、対人に関しては甘いけれどサバイバルに関しての判断はやはり卓越している、だなどと俺を褒めつつその姿勢は感心すべきだと思ったから自分もあの子に留守番を任せてみることにしたと呟くモーリツさん。
……本当はただルゥちゃんの自主性を重んじただけなのだが、なんか思いっきり誤解されてしまったようだ。
だけど下手に子供の意見を無視できなかったとか言ったら呆れられそうな気がしないでもなかったので、あえて俺は何も言わずむしろ話をごまかすようにさっさと探索を済ませようとばかりに足を進めるのだった。
今回名前が出た動物
パラケラテリウム(パララ君二号)