六百四十一頁目
こうも意味のありそうな絵画が道中に二つも彫り込まれているだなんてこの洞窟は何か特別なのかもしれない。
ただこの絵画は汚れが酷いこともあり、今の時点では幾ら眺めていてもこれ以上わかることはなさそうだ。
だから一旦絵から離れると今度は反対側の壁の方を観察してみることにした。
しかしこちらの壁にはなにも彫り込まれておらず、代わりとばかりに金属鉱石や黒曜石の塊が転がっているばかりであった。
更に正面は崖になっており、下は今までとは違って地面までが見通せない程に深くなっている。
これはコレオちゃん抜きで落ちたら戻ってこれないだろうし、そもそもパラシート抜きなら落下した衝撃で命を落としかねない。
しかも吹き抜けになっているのかどこかから蝙蝠の鳴き声と思わしき音がかすかに聞こえてきているではないか。
一応左の壁側には進めそうな道があったはずだが、流石に動物の気配が感じ取れた以上は引き返し時だろう。
それでもこの時点でわかる範囲ぐらいはしっかり調べておこうと思いモーリツさんと改めて周囲を見回そうとして……ほぼ同時にソレに気が付いた。
目の前に広がる暗闇に染まっている崖の向こう側、少し離れた下の方で何かが輝いている。
篝火にも似ているがこの距離であれだけ目立つということは多分電灯のように眩しい光を放っているはずだ。
何よりも自然にありそうな炎という光源であれば周辺の影が揺れ動くはずだ。
つまりアレは人工的な輝きであり、洞窟内にある人工物など思いつくのはカプセルと……思わず顔を上げたところモーリツさんと目が合った。
そしてほぼ同時に頷いた俺達は無言のままお互いに望遠鏡を取り出し、光の正体を探るべく覗き込んで……ソレを見た。
中空に浮かびながら波動のような不可思議な光を放つ幾何学的な形をした一目見てお宝だとわかる存在、すなわちアーティファクトだっ!!
再び顔を上げた俺はまたしてもモーリツさんと顔を見合わせることになるが、そこで彼が浮かべていた表情は見覚えのあるものであった。
胡散臭さもなければ大人びた余裕もなく、僅かにだが頬を高揚させて唇を緩めているその顔は間違いなくここに来た人間が感動した時に浮かべる子供のような喜びの混じった表情であった。
……ここで生きていくだけならばあまり利用価値のないアーティファクトを見てまさかこんな嬉しそうにするだなんて、冒険家としての血が騒ぐとか言ってたのも嘘じゃなかったんだなぁ。
今回名前が出た動物
オニコニクテリス(蝙蝠)