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こちらに気づいたモーリツさんがパララ君二号の上からこちらに合図を送ってくる。
それに従うように近くへ着地して話しかけようとしたところ、彼の陰に隠れるように幼さの残る少年が居ることに気が付いた。
マァやルゥちゃんと同い年ぐらいのようだが、あの二人と違って佇まいから何というか文明的な臭いを感じる。
尤もそんな彼は緑のオベリスクの方から近づいてくるキャシー達が連れてきたであろうゴーレムを始めとした巨大生物を何とも興味ありげに見つめていた。
どうやらモーリツさんは連れて行ってほしい人達の中で特にこの子を重視しているようで、敢えて先に俺達へと紹介しておきたかったようだ。
実際に話しかけてみたところ物凄く済んだ目でまっすぐこちらを見ながら丁寧な挨拶をされてしまう。
自らの名をシャルルと名乗った彼にこちらも名前を告げていくが、次いで彼の口から飛び出したのは予想もしない言葉であった。
「これもすべて偉大なる神の思し召し……さあ共に我らの指導者エティエンヌの元へ集い、聖地回復の旅へ赴きましょう」
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ルゥちゃんに続いてまたカルトっぽい宗教の関係者なのかと少し警戒しそうになる。
しかしそんな俺に対してソフィアは何かに気が付いたようにモーリツさんへ視線を向けたかと思うと、物凄く痛まし気な眼差しで少年を見つめていた。
一体どうしたのかと一旦シャルルから離れてソフィアに話しかけるが、彼女は零れそうな涙をこらえるのに精いっぱいなようでろくに口を利くことができなかった。
いきなりの変化に戸惑う俺であったが代わりにモーリツさんが近づいて来てそっと耳打ちする形で応えてくれた。
彼は悲劇に終わったいわゆる少年十字軍と言う集団に属する一人であったのだと……
それを聞いて思わず俺もまた目を見開いて彼の方に視線を投げかけてしまう。
余り歴史には詳しくないが学校の授業で習った覚えがある……神のお告げを信じた子供たちが自ら十字軍を名乗り聖地奪還に向かったが悪い大人に騙されて全員奴隷商人に売り飛ばされてしまった悲劇の話。
どうしてあの僅かな会話でソフィアがその事実にたどり着いたのかは分からないが、確かにこの少年がそんな末路を辿ったと思うと胸が締め付けられる思いが湧き上がってくる。
尤も続けて彼が語ったところから推察するに、恐らく彼は奴隷商人の船に乗るか乗らないかの時期からここへやってきたようである。
当初は何が起こったかわからなかったようだが今では道中で課せられた神の試練のようなものだと認識しているようで、物凄く純粋な目でもってこれを乗り越えて仲間の元へ聖地奪還の力になりうる僕にした動物を引き連れて戻るのが自らの使命なのだろうと十字を切りながら天を仰ぐシャルル少年。
……これはまあモーリツさんがARKの真実を信じさせられないのも無理ないなぁ。
今回名前が出た動物
パラケラテリウム(パララ君二号)
ロックエレメンタル(ゴーレム)